本研究では、プロテアーゼを用いたポリペプチドの化学酵素合成法の確立を目的に研究を進めた。その際、重合と分解の平衡反応に影響を与えるファクターである酵素種、基質種、基質濃度などに着目し、重合反応に最適な反応条件の確立を目指した。本年度は、アミノ酸エステルの重合反応におけるプロテアーゼ活性を探るべく、エンド型ならびにエキソ型ペプチダーゼに着目し、基質特性や重合挙動の比較を行った。 エンド型セリンプロテアーゼProteinase Kのアミノ酸エステル重合反応に対する活性を評価したところ、glutamic acid diethyl esterやalanine ethyl esterなどのアミノ酸エステルに対して良好な触媒作用を示した。またその収率はモノマー濃度に依存し、重合度は5から10程度であった。一方芳香族系アミノ酸であるtyrosine ethyl esterやphenylalanine ethyl esterといったアミノ酸エステルを用いた際には加水分解反応のみが生じ、重合反応は進行しなかった。 次にエキソ型プロテアーゼであるCarboxypeptidase Yのアミノ酸エステル重合反応に対する活性を評価した。N末端をBenzoyl基で保護したbenzoyl alanine methyl ester(BzAlaMe)存在下、基質にleucine methyl esterを用いることで良好に重合反応が進行した。またそのオリゴマー収率は反応時におけるBzAlaMe/基質仕込み比や基質濃度に依存した。以上の結果よりエキソ型プロテアーゼを用いたオリゴペプチド合成の有用性が示された。
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