本研究の目標のひとつは腎臓の尿管芽分岐機構において、分岐形態形成に関わる新規制御因子を同定することである。腎臓の上皮である尿管芽は、発生初期に後腎間葉と相互作用して、繰り返し分岐を起こす。この分岐形態形成が異常であると、形成不全など重篤な表現型になることが知られている。これまでに、さまざまなシグナル経路がこの分岐形態形成機構に関わるとされ、解析されている。しかしながら、分岐が起こる際のその詳細なメカニズムは解明されていない点が多い。その中で、レチノイン酸シグナル経路は、分岐形態形成を含め、腎発生において重要な役割を果たすことが知られている。本研究ではそのレチノイン酸シグナル経路の腎発生での機能について着目し、詳細な分子メカニズムに迫ることを目指し、解析を行なうことにした。そこでマウスの後腎を、器官培養の実験系であるex vivo実験系を用いて培養し、レチノイン酸により発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイによって網羅的に解析した。qPCR実験によって、選び出した因子のマイクロアレイ実験の結果を評価した。さらに、同定された因子のうち、いくつかの因子について、in situハイブリダイゼーションを行ない、発現場所を解析した。また現在、いくつかの候補因子の下流シグナル経路について、尿管芽分岐形態形成への影響やレチノイン酸シグナル経路との関連について、さらに詳細な解析に取り組んでいるところである。
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