研究課題
S-アデノシルホモシステイン水解酵棄の変異株sah1-1は、野生株と比較して許容温度においても増殖遅延が観察され、著しい寿命の短縮を示す。また、細胞内にS-アデノシルメチオニン(SAM)およびS-アデノシルホモシステイン(SAH)が高蓄積していることが明らかとなっている。我々は、これまでsah1-1変異株の増殖遅延抑圧を指標とし、寿命が延長した変異株のスクリーニングを行い、長寿変異株SSG1の取得に成功している。本研究では、SSG1株における寿命延長の詳細なメカニズムを明らかにすることを目的に解析を行った。解析の結果、SSG1株ではSAM、SAH両物質が高蓄積しており、Ssg1は液胞でこれらの物質の濃度調節に関与することが示唆された。また、Ssg1の機能を解析するために銅処理法により液胞、細胞質におけるSAM、SAHを分画し解析を行った。その結果、SSG1変異により、特にSAHが有意に液胞側に蓄積されることが明らかとなった。さらに、SSG1株はラバマイシン感受性を示し、TORC1経路と遺伝的関係を示すことが予想された。そこで、TORC1経路が制御する生理機能について解析を行った。解析から、特にSSG1△tor1株において、増殖の遅延、ストレス耐性の向上、オートファジーの促進、翻訳の減少といった表現型が観察された。さらに、TORC1経路の下流で機能するSch9、Rps6両タンパク質のリン酸化レベルを解析したところ、有意に下がっていることが明らかとなった。以上の結果から、SSG1変異はSAM、SAHによるTORC1経路の制御を介して寿命を延長することが示唆された。現在、SAM、SAHの蓄積によるTORC1制御に注目し、さらに解析を進めている。
(抄録なし)
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