STAT3異常症(高IgE症候群の1つであり、STAT3のドミナントネガティブ(DN)変異を有する)におけるアトピー性皮膚炎発症のメカニズムを検討する目的で、ヒトSTAT3異常症の遺伝子異常を再現したモデルマウス(STAT3-DNマウス)を作製した。このSTAT3-DNマウスは、SPF環境下では皮膚炎の自然発症は起こらなかった。そこでSTAT3-DNマウスにハプテン反復塗布により皮膚炎を誘発させたところ、野生型マウス(WTマウス)と比較して有意に皮膚炎の増悪が認められた。次に、Oxazoloneを反復塗布した耳に浸潤している細胞数を評価した結果、STAT3-DNマウスではWTマウスと比較して、CD4陽性T細胞、好酸球、好塩基球の有意な増加が認められた。また、Oxazolone塗布したSTAT3-DNマウスの皮膚ではTh2アトラクティングケモカインであるCCL17やTh1アトラクティングケモカインであるCXCL9、また、IFNγやIL-4の有意な発現上昇が認められた。そこでこれらのケモカインやサイトカインはどの細胞が発現しているのかを検討したところ、CCL17は主に樹状細胞、CXCL9はCD45陰性の非血球系細胞、IFNγはT細胞、そしてIL-4は好塩基球でその発現レベルが高いことが分かった。さらに、Oxazolone塗布後の血清IgEレベルを測定したところ、STAT3-DNマウスではWTマウスと比較してOxazolone特異的IgEの優位な上昇が認められた。
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