本年度はまず、5月22日に博士論文のリサーチ・コロキアムを開催した。 第二に、研究計画に沿って神貞大王大妃死去をめぐる諸問題に関する論文を執筆した。その成果は「朝鮮からみた趙太妃死去をめぐる諸問題」という題目で、九州史学会大会朝鮮学部会で発表した(2013年12月8日)。神貞大王大妃死去をめぐる諸問題は、日清戦争以前の条約体制と宗属関係の錯綜する世界で、朝鮮政府がそれにどのように対応しようとしたかがわかる有益な事例であるにも関わらず、中国史研究ではまとまった研究があるものの、朝鮮史の立場からはこれまであまり関心が持たれてこなかった。本研究は、朝鮮史の立場からこの問題を見直すことで朝鮮政府の対外政策を検討しようとするものである。 第三に、昨年度『史学雑誌』(第122編第2号、2013年2月)に掲載された拙稿「朝鮮政府の駐津大員の派遣(1883・1886)」の後続論文にあたる「朝鮮政府の駐津督理交渉通商事務(1886-1894)」を執筆し、『朝鮮学報』(掲載号未定、査読審査済み)に投稿した。両論文により、朝鮮政府が宗属関係を維持しながら国際法を受容していく過程と、その難しさを示すことができた。さらに天津に派遣された使節に着目して1883年から1894年までの朝鮮政府の対外政策をみたことで、国際法を受容しようとする対外政策の変化が1886~1887年頃にみられることがわかった。これは、昨年度の研究結果を補強するものである。なお、両論文の成果は、韓国・ソウルで開かれた韓国外交史研究会で発表し(2013年10月12日)、政治・外交史を専門とする方々から、主に理論の面で多くの有益なご意見をいただいた。
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