研究概要 |
1、植物共生細菌の群集構造解析法の検討 16S rRNA遺伝子配列の配列長と系統分類精度の関係を調べるために、サンガー法でシーケンスした16SrRNA遺伝子配列を250-450塩基に切断し、系統分類精度を調べた。科より高次の分類では、短い配列でも正しく系統分類されたが、属レベルでは350塩基以下では正しく分類されない配列が多かった。特に植物共生細菌であるBra(Bradyrhizobium属は、300塩基以下では正しく分類できなかった。 2、気温、CO_2濃度がイネ根でのメタン酸化に与える影響 野外環境でCO_2濃度200pppm,気温2度上昇を実現するFACE(Free-air CO_2 enrichment)施設(つくばみらい市)でメタン放出量が異なる3品種のイネを栽培し、根共生細菌の群集構造解析、メタン酸化遺伝子pmoAの定量PCRを行った。すべての品種でMethylosinus属細菌の相対存在比が気温、CO_2濃度上昇により低下した。pmoAのコピー数は、気温、CO_2濃度上昇によりすべての品種で低下した。気温、CO_2濃度上昇によるメタン放出量の増加の一因は、イネ根でのメタン酸化量が小さくなることにあるかもしれない。 3、マメ科植物クサネムの根粒共生機構 水田土壌から分離されたBradyrhizobium oligotrophicum S58のゲノムを決定したところ、クサネム根粒菌であるBradyrhizohium sp.ORS278のゲノムと極めて類似しており、クサネム根粒共生に関わる遺伝子の多くが、S58ゲノムに存在した。そこで、S58をクサネムに接種したところ、根粒形成し、窒素固定もした。S58近縁の水田土壌分離株、S42,S55,S72,S80を接種すると全て根粒形成、窒素固定をした。クサネムとの根粒共生は、S58近縁の細菌に共通の特徴であると考えられる。
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