研究課題
昨年度までに、大気中の二酸化炭素濃度の上昇によりイネ(コシヒカリ)の根に共生する細菌の群集構造が変化することをFACE(開放系大気CO_2増加)実験施設を使用して明らかにした。大気CO_2増加処理(FACE処理)によるイネの生育、収量、メタン発生などの増加量はイネ品種により異なることが報告されている。当該年度は、FACE処理による根共生細菌の変化に品種間差が存在するかどうかを調べることを目的とした。イネ品種はコシヒカリ、タカナリ、秋田63号を用いた。タカナリと秋田63号は、FACE処理によるイネの収量増加がコシヒカリに比べ大きいことが報告されている品種である。イネ根から抽出した細菌DNAの16S rRNA遺伝子をシーケンスし、UniFrac解析をしたところ、FACE処理はタカナリとコシヒカリの共生細菌群集の第一主成分得点を有意に変化させた。しかし、秋田63号では有意な変化が観察されず、FACE処理の効果はコシヒカリ、タカナリに比べ小さいことが明らかになった。タカナリとコシヒカリでは、FACE処理によりBurkholderia kururiensisの相対存在比率が上昇したが、秋田63号では変化しなかったことが主な要因と考えられる。B. kururiensisは、窒素固定や植物ホルモン合成により、イネの生育を促進することが報告されており、B. kururiensisの挙動に品種間差が見られたことは注目に値する。イネ根抽出細菌DNA中のメタン酸化酵素遺伝子(pmo4)のコピー数は、タカナリ、コシヒカリではFACE処理により、低下する傾向が見られたが、秋田63号では変化しなかった。メタン生成酵素遺伝子(mcrA)はコシヒカリ、秋田63号では、FACE処理により有意に増加したが、タカナリでは変化しなかった。根圏のメタンの動態にも品種間差が見られる可能性があることを明らかにした。
(抄録なし)
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