研究課題/領域番号 |
12J07152
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
一刀 かおり 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 天然物合成 / 有機合成 / シアタン骨格 / エリナシンE / ラジカル環化反応 / IBX酸化反応 |
研究概要 |
シアタン骨格(図1)はエリナシン類に共通する骨格であり、神経成長因子(NGF)合成活性促進作用のファーマコファとして働くことが示唆されている。エリナシンEは、神経成長因子合成活性促進作用の他に、選択的κ-オピオイドレセプターアゴニストであることから、ガン疼痛治療薬としてモルヒネより非常に優れた新規治療薬となる可能性を秘めている。しかし、生化学的研究が急速に求められているにも関らず、脳内動態実験の詳細な研究は成されていない。エリナシンEの脳内動態研究を遂行するため、エリナシンEの詳細な合成知見を基に、化学プローブを用いた分子イメージング実験が有効と考えた。 私は、独創性の高いシアタン骨格の構築法を開発し、エリナシンEの合成を開始した。シアタン骨格は炭素一炭素結合から成る多環性化合物であることに着目し、ラジカル反応によるシアタン骨格の構築を立案した。ラジカル反応は中性条件で実施でき、極性反応で生じるような副反応がないため、高度に官能基化された天然物においては、副反応を避けるための保護をする必要がない。 有機合成の手法を用いて、ラジカル環化反応の前駆体を合成し、適切なラジカル条件下に附したところ、高収率で目的のラジカル環化体を得ることに成功した。 一方で、合成研究途中に用いた予期せぬ反応に遭遇した。第一級アルコールを、汎用される酸化剤IBXでDMF溶媒中加温処理したところ、一炭素減じたカルボン酸が得られることが分かった。この反応の一般性を調査するため、反応性の高い官能基を含む化合物においても、高収率で一炭素減じたカルボン酸が得られたことから、有機合成化学分野において汎用性の高い新規反応の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シアタン骨格の7員環の構築において、予想外の化合物の反応性から、望む結合反応が進行しないなどの実験結果が得られた。従って、これらを進めるためには、種々の反応条件、反応検討を行う必要があり、当初の計画からやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画よりやや遅れているが、これまでの検討の結果により、化合物の反応性を概ね把握することができた。今後は、得られた実験結果を基に、分子内反応を中心とした合成経路の検討を行う予定である。
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