研究課題/領域番号 |
12J07163
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野崎 貴裕 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ハプティクス / 動作認識 / バイラテラル制御 / 動的計画法 / マスタ・スレーブシステム / 座標変換 / 腱駆動 / ロボットハンド |
研究概要 |
本研究の目的は人間の技術を抽出・保存、・認識・再現することで人間と同様に器用で汎用性のあるロボットを実現することである。腱駆動ロボットハンドにバイラテラル制御を実装することで、遠隔操作時の情報から人間の技能・器用さを解明する。本年度においては以下のような研究成果を得た。 1.主成分分析を用いた異構造バイラテラル制御を提案した。また、本手法を外骨格型ロボットハンドと鉗子型手術支援ロボットに実装し、その有用性を確認した。これにより人間の「握る」という動作を道具の「握る」動作と関連付けることに成功し、より直感的な操作を可能にした。 2.位置制御、力制御および座標変換に基づく制御系設計論についての調査を行った。また、機能性の概念と斜交座標制御に着目し、遠隔操作システムと把持操りシステムの類似性について言及した。 3.多自由度腱駆動ロボットハンド開発のため、腱駆動システムについての研究をおこなった。具体的には腱駆動球体関節の開発と、腱伸張補償法の提案を行った。特に腱伸張補償法は腱のモデルを必要とせず、ロボットハンドの触覚伝達性能を向上させることが可能である。 4.5自由度10軸の腱駆動ロボットハンドを用い、単純な要素動作の時系列的組み合わせにより構成される複合動作の認識を行った。本手法は遠隔操作により取得した触覚情報をコサイン類似度により量子化し、事前に保存した参照パターンと照合するものである。動的計画法を用いることで非線形な時間軸変動への対策をおこない認識率の向上に取り組んだ。 5.把持操りロボットにより取得した触覚情報にモード変換を施し、各空間における動作認識をおこなった。検証実験により位置・力・時間の異なる動作を適切に分類可能であることを確認した。また、有用性確認のため本提案手法を実時間遠隔操作ロボットに実装し、パワーアシストシステムへの応用をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多自由度腱駆動ロボットハンドを用い、触覚情報に基づく高性能な動作認識に成功した。また、主成分分析による人間動作の特徴量抽出および、モード分解による腱の伸び補償に成功した。研究成果の発信においても、当初の予定の約3倍となる学術誌5編・国際会議10編の論文発表をおこなった。以上より、高度熟練技術の抽出・保存・認識を実現し、本研究は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより実用的なシステムに本研究成果を援用し、熟練技術の抽出・保存・認識に取り組む。また、腱の伸張補償についての検証実験を実施し、触覚情報抽出性能の向上に引き続き取り組む。さらに、熟練技術の再現への展開を開始する。熟練技術の再現においては触覚データベースの情報を指令値としてスレーブロボットのみを駆動させることを予定している。しかし、触覚情報保存時と動作再現時では接触環境の位置や物性が異なってくることから、補償値が必要となる。本研究では倒立振子や切削、刺入など評価が明確な動作において動作再現をおこない、適切な補償値の導出を目指す。
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