研究課題/領域番号 |
12J07169
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小泉 喜典 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 事故予防 / 傷害予測 / ノーマル行動 / 裂傷発生メカニズム / 行動センシング / インパクトバイオメカニクス / 子ども |
研究概要 |
研究目的:様々な環境に適用可能な不慮の事故の予測手法への拡張を目指し、ノーマル行動の状態空間モデルを用いた裂傷発生事故の予測手法の確立を目的とする。具体的には、環境が持つ特徴(形状、機能、配置など)を変数としたノーマル行動の状態空間モデルと、裂傷メカニズムの解明による裂傷の発生を再現するシミュレーション手法を開発する。これらを統合することで、日常生活環境下における裂傷発生事故の予測手法を確立する。 研究意義:本研究によって確立するノーマル行動の状態空間モデルを用いた裂傷発生事故の予測手法を用いることで、従来、勘や経験に頼っていた事故の予測を様々な環境に対して、科学的かつ定量的に行うことができるようになる。これにより、戦略的・効果的・きめ細かかつ具体的な事故予防策を考案可能になる。 研究成果:裂傷発生メカニズム解明のための動力学特性分析システムを開発し、開発システムを用いた実験を行った。開発システムは、動的特性を計測する衝撃試験機と、有限要素シミュレーションシステムから構成されている。実験は、動物の中でヒトの皮膚に類似していると言われている豚の皮を使用し、衝突速度、衝突させる稜線部材の材質、稜線形状を変え、のべ105の条件のもと行った。この実験により、各材質における稜線形状と衝突速度の組み合わせによる裂傷の発生確率分布が得られた。また、有限要素法シミュレーションを用いて、実験を再現することで、実験からだけでは得られない皮内部の応力状態が得られた。子どものノーマル行動計測に関しては、12台のビデオカメラと子どもの体幹に装着した加速度・ジャイロセンサからのデータを同期した状態で記録可能な日常行動計測システムを開発した。記録した長時間の行動映像から転倒映像を抽出するためにセンサデータを用いた転倒検出アルゴリズムを開発し、転倒映像の自動抽出を可能にした。抽出した映像を用いて転倒動作解析を行い、転倒の動作データを得る。これまでに生後11か月~50か月の19人の行動計測を行い105回の転倒データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
裂傷は皮膚表面からではなく、内部から裂け始める可能性が高いなど、その発生メカニズムの解明に向け、着実に成果を上げている。12台のビデオカメラと子どもの体幹に装着した加速度・ジャイロセンサからなる日常行動計測システムを開発し、裂傷に繋がるノーマル行動のひとつである転倒の動作データを収集可能にした。以上の業績から、研究計画の内容が着実に実施されており、おおむね順調に研究が進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請時の研究計画通り、1年目で収集したノーマル行動データを、年齢、身長、体重といった子ども自身のパラメータと、形状、機能、配置などの環境の特徴と関連付けたノーマル行動の状態空間モデルを構築する。また、裂傷発生メカニズムの解明を進め、計算機上で裂傷が模擬可能な生体力学モデルを構築する。構築した裂傷がシミュレート可能な生体力学モデルとノーマル行動の状態空間モデルとを統合し、裂傷発生事故を予測する手法を確立する。さらに、医療機関と協力し、裂傷発生状況のデータや裂傷発生に起因した製品のデータを収集することで、裂傷データベースを構築し、これと予測結果を比較することで、妥当性を検証する。
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