研究概要 |
瀬雑な背景の中から,餌や天敵などのカテゴリを効率良く探索することは,適応には必須な能力であると考えられる。申請者は,ハトに有効なカテゴリ探索課題を開発しカテゴリ化に起因するトップダウン的要因がハトの探索効率に及ぼす効果について検討した。日本人男子学生5名の顔画像を用いて,基礎カテゴリを模した人工カテゴリを作成した。ハトごとに異なる1名の顔をカテゴリ事例が共通してもつ要素(P)とし定義し,他4名の顔およびそれらの合成画を事例特異的な要素として定義した。共通要素(P)と事例特異的要素を合成することにより,共通要素Pによって特徴付けられるカテゴリ事例を作成した。カテゴリ事例を標的刺激とし,カテゴリの作成に使用しなかった顔画像を妨害刺激とするカテゴリ探索課題をハトに行った。これまでの研究成果の一部(妨害刺激の斉一性が探索効率を促進する:実験1,新奇な事例特異的要素は探索効率を低減させない:実験2,標的刺激としてカテゴリ事例を用いた場合,カテゴリ事例の典型性が探索効率を促進させる:実験3)を英語論文としてとりまとめた。海外の学術誌(Vision Research)に原著論文(題目:Pigeons show efficient visual search by category : Effects of typicality and practice)として掲載された(2012, 72, 63-73)。また新たに,カテゴリ事例を非カテゴリ事例の中から探索する場合(C-N群)と,非カテゴリ事例をカテゴリ事例の中から探索する場合(N-C群)を比較した実験(実験4)を行い,N-C群の方がC-N群よりも迅速に探索を行う探索非対称性が確認された。ヒト以外の動物において初めて,カテゴリ化(トップダウン的要因)による探索非対称性が示された。実験5では,妨害刺激としてカテゴリ事例を用い,カテゴリ事例の典型性は探索効率を促進しないことを明らかにした。この成果は,第72回日本動物心理学会大会で発表を行い,2012年度優秀発表奨励賞を獲得した。実験4と実験5を英語論文としてとりまとめ,海外の学術誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果の英語論文としてとりまとめ,海外の学術誌(VSion Research)に原著論文(題目:Pigeons show efficient visual search by category : Effects of typicality and practice)として掲載することができたため。また,計画通りに実験を行うことができ,来年度の初めには新たな英語論文を投稿することができるため。
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