研究課題/領域番号 |
12J07194
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 耕平 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | シグナル伝連 / 細胞生物 / がん / EphA2受容体 |
研究概要 |
チロシンキナーゼ受容体EphA2は浸潤・転移性を示すがん細胞で高発現している。所属する研究室ではシグナル伝達の観点から、EphA2のがん化促進メカニズムの解析を行っている。以前の研究からEphA2はリガンド非依存的に、細胞運動・接着に関与するRhoファミリー低分子量G蛋白質RhoGとその活性化因子Ephexin4を介し、がん細胞の運動元進及びアノイキス耐性の獲得に寄与することを明らかにした。本研究ではこのシグナルの抑制機構を調べており、これまでにEphexin4と結合する抑制因子としてScribbleを特定した。しかし、EphA2との関係性、がん化前後の制御メカニズムを評価する上で最適な実験系の選定には至っていなかった。そこで上皮細胞を用いた三次元培養モデルに注目し、その有用性を検討した。この解析では、肝細胞増殖因子HGF刺激によるがん細胞様の浸潤形質の誘導を、Cyst(上皮管腔構造)表面の突起形成形を指標として確認する。そこでまず、HGF刺激によるEphA2の性質変化を確認した。発がん性を示すEphA2ではリガンド結合時とは違い、897番目のセリンにリン酸化を受けており、この部分を特異的に認識する抗体を用いてその割合を調べたところ、刺激後に有意な上昇が見られた。この結果を受け、三次元培養モデルにおけるEphA2ノックダウンの影響を調べた。その結果、ノックダウンにより突起を形成するシストの割合は有意に減少した。また野生型EphA2を発現させた場合、この効果が消失するのに対し、発がん性を示さないEphA2の変異体を発現させても、変化は見られなかった。以上により、HGF刺激による浸潤形質の獲得にはリガンド非依存的な活性を示すEphA2が必要であることがわかった。また形質変化前後のEphA2制御メカニズムを比較評価する上で、三次元培養モデルの有用性を示すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HGF刺激による浸潤形質の誘導から、EphA2が浸潤・転移性を示すがん細胞において見られる発がん性を示すEphA2へとその性質を変化させることを新たに明らかにすることが出来た。そしてこの結果を受け、よりin vivoに近い評価系である三次元培養モデルを導入し、Cystの形態変化を指標として浸潤形質の獲得にEphA2が必要であることを示した。しかし、この評価系をもちいてEphA2とEphexin4/RhoG経路との関連を明らかにするには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
MDCK細胞を用いて、HGF刺激下におけるEphA2-Ephexin4の結合変化、及びRhoGの活性変化について確認し、EphA2の下流においてEphexin4/Rh。G経路が働いているのかを調ぺる。その後、Ephθxin4、あるいはScribbleをノックダウンした細胞を用いて三次元培養を行い、EphA2ノックダウン時の結果と比較する。また、ScribbleがEphA2とEphexin4の結合を阻害しているのか、あるいはEphexin4とRh。Gの結合を阻害しているのかを評価する。そのための実験として、HEK293T細胞にEphexin4を発現させた場合、Ephexin4とScribbleを共発現させ場合とでRhoGの活性に変化があるのかを調べる。これらの実験から、ScribbleがどのようにEphA2/Ephexin4/RhoG経路と関わっているのかを検討していく。
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