マイクロ熱流体デバイスの更なる性能向上・新機能発現に向けて,微小空間特有の熱流動現象を計測する必要があるが,色素や粒子を流れ場に添加する従来法では混入物による潜在的制約が不可避であった.本研究課題は,ラマン散乱光に着目することで混入物に頼らない非侵襲熱流動センシング法を開発し,異なる物質の界面 (異相界面) に適用することでマイクロ・ナノスケールの界面熱流動現象について考察する.平成26年度は,異相界面における現象解明に向けて,実流動場への適用を意識した光学システムの改善・検証に取り組んだ.具体的な実施内容を以下に記す. 1.エバネッセント波照射を用いた全反射ラマンイメージング法の有効性検証:前年度開発した全反射自発ラマンイメージング法の有効性を検証した.流れ場の条件 (レイノルズ数) や計測条件 (エバネッセント波スポットの位置) を変化させて散乱光の計測を行った結果,レイノルズ数が小さく,スポット位置が下流にある場合において,拡散の進行により各成分の濃度勾配が緩やかになることが確認された. 2.非線形ラマンセンシング (液流中の濃度計測) における非共鳴バックグラウンドノイズの低減:前年度までに構築したCARS光 (非線形ラマン散乱光の一種) センシングシステムの光路上に,新たに偏光板やλ/2板等を挿入することにより,非共鳴バックグラウンドノイズの影響を低減可能な偏光CARSシステムの構築を行った. 3.非線形ラマンセンシング (気流中の濃度計測) における非共鳴バックグラウンドノイズの影響検証,ならびにノイズの影響を受けにくい新規チャネルの設計:前年度までに構築したCARS光センシングシステムを用いて,チャネル素材であるアクリルやガラスから発生する非共鳴バックグラウンドノイズの影響について検証を行った。また、その結果をもとにノイズ発生を低減する新規チャネルの設計を行った.
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