研究課題/領域番号 |
12J07202
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
藤村 卓也 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 金ナノ粒子 / 有機無機複合体 / ポルフィリン / 無機層状化合物 / 粘土鉱物 / 光増感反応 / 電子移動 / 配列制御 |
研究概要 |
本研究課題における目標は、無機ナノシート上に吸着したカチオン性金属ポルフィリンを用いて、登録者の所属する研究室独自の方法である光増感テンプレート還元法を行い、金ナノ構造体を作成する事である。この金属ポルフィリンは軸配位子としてピリジン誘導体を持つ事ができ、ピリジン誘導体の持つ官能基と金ナノ粒子の相互作用の強弱により、金ナノ粒子の析出状態を制御できると考えられる。この金属ポルフィリンは本研究課題において大変重要な役割を果たすため、本年度はカチオン性ポルフィリンの合成と、そのナノシートと複合化について検討した。また、ナノシート上のポルフィリン分子の基礎的な挙動についても、観察を行なった。本研究に不可欠なカチオン性金属ポルフィリンの合成は比較的精製が困難であったが、結果として塩析にて単離精製に成功した。また市販されている金属ポルフィリンからも、本実験に有用なカチオン性金属ポルフィリンを選定し精製を行なった。水中においてこれらのポルフィリンとナノシートとの複合化を行い、いずれのポルフィリンも比較的高密度、かつ会合する事無く単分子的に複合化する事が分かった。複合化したポルフィリンの軸配位挙動について検討した所、ピリジンのCo(III)TMPyPに対する配位平衡定数は、水中において大きな配位平衡定数を持っていた。これは既報とおおよそ一致し、この値はIn(III)TMPyPに比べ千倍以上,Zn(II)TMPyPに比べ一万倍以上と非常に高かった。 また無機ナノシート上に吸着したCo(III)TMPyPの配位平衡定数は水中に比べ劣るものの高い配位平衡定数を維持していた。これは本研究課題において重要な知見であり、Co(III)TMPyPは本研究課題において、有用な金属ポルフィリンの一種であると考えられる。現在はCo(III)TMPyPを用いた複合体による光増感テンプレート還元法の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年はカチオン性金属ポルフィリンの合成および精製、そして合成したポルフィリンの基本的な物性評価を行った。合成したCo(III)TMPyPは非常に高いピリジンの配位平衡定数を持っており、本研究において非常に重要であったと考えられる。申請時の本研究課題における一年目年次予定はカチオン性金属ポルフィリンの合成および評価であり、ここから高い軸配位平衡定数を持つカチオン性金属ポルフィリンを選定する事であった。よって一年目の年次予定はおおよそ達成されていると考えられる。現在はCo(III)TMPyPを用いた複合体による光増感テンプレート還元法の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ピリジン誘導体を軸配位子とする金属ポルフィリンを用いて、光増感テンプレート還元法を行い、金ナノ構造体の作成を目指す。Co(III)TMPyPに対しピリジン誘導体は強固に軸配位する事が前年度の研究より分かっているので、Co(III)TMPyPは本実験において期待が持てる。またもう一つ強固な軸配位子を持つカチオン性金属ポルフィリンとして、Rh(III)TMPyPの合成および精製操作を現在検討している。Rh(III)TMPyPはCo(III)TMPyPに比べ配位平衡定数は劣るものの、寿命などの光化学的性質では本実験において優れていると考えられる。規則的と思われる構造が見られた場合、高速フーリエ変換や、小角X線散乱などを用いてより正確な規則性評価を行う。また金ナノ粒子の構造制御に成功した場合、他の金属ナノ粒子の生成についても行い、ナノ構造制御方法としての確立を目指す。
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