ベーチェット病(BD)は環境要因と遺伝要因が互いに作用し合う多因子疾患であり、様々な側面からの基礎研究が病態解明には必須である。これまでに、BD患者-健常者間における関連解析により、TRIM39上のSNP(rs2074474)に強い感受性を見出している。さらに連鎖不平衡解析により、Rpp21上のrs974963がrs2074474と強いLD(r2>0.9)にあり、アミノ酸置換を伴うSNPであることも見出している。しかしながら、TRIMファミリーのほとんどが機能未知分子であり、TRIM39についても機能解析の報告は非常に少ない。そこで、TRIM39の機能を明らかにし、BDにどのように関与するのかについて検討することを目標としている。 本年度は、我々の同定したBDに感受性のある新規感受性遺伝子であるTRIM39の機能解析を行った。研究実施計画では、TRIM39についてヒト培養細胞へ過剰発現系を樹立し、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、制御する遺伝子を同定する予定であった。しかしながら解析の途中で、ヒトの細胞株でTRIM39(TRIM39B)のみならず、近傍にあるRPP21とのキメラ遺伝子(TRIM39R)が発現しており、TRIM39RおよびRPP21についても行った。その結果、Rpp21では発現量が変動した遺伝子は見出せなかったが、TRIM39BとTRIM39Rでは34および42個の遺伝子を同定した。さらにそれらをノードとし、生物学的パスウェイを同定した結果、TRIM39Bではなく、TRIM39Rが1型インターフェロン(IFN)の応答とウィルス感染防御に関与することが明らかとなった。これまでに機能が明らかとなったTRIMでは、PRY-SPRYドメインがIFN応答に重要であるとされていたが、本研究ではPRY-SPRYドメインを保持しないTRIM39Rが重要であった。
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