研究課題/領域番号 |
12J07245
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田部 博康 京都大学, 物質―細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 蛋白質結晶 / 生物無機化学 / 一酸化炭素 / カルボニル錯体 / シグナル伝達 / バイオガス分子 |
研究概要 |
昨年度達成した、リゾチーム結晶を用いた一酸化炭素分子の貯蔵/放出場構築の手法を利用し、本年度は細胞内部へのガス分子デリバリーを行った。また、一酸化炭素{CO)分子の貯蔵/放出を行う蛋白質結晶の新たな合成法について検討を行った。 1. リゾチーム結晶複合体を用いた細胞へのCO分子導入(学会発表済、論文投稿準備中) リゾチーム結晶とCO放出分子の複合化によりCO放出結晶を調製し、細胞へのCO導入とNF-κB活性制御を試みた。 HEK293細胞を培養し、ここにCO放出分子複合化リゾチーム結晶(CO-Lysozyme)を加えた。一定時間培養後細胞を破砕し、ルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。その結果、CO-Lysozymeを加えた細胞は強いルシフェラーゼ発光を示した。このことは、CO-Lysozymeから放出されたCO分子が細胞内に導入されたことを示唆している。 2. 昆虫細胞多角体結晶を用いたCO放出材料の生体内合成(学会発表済、特許出願済) 細胞内で生成する蛋白質結晶である昆虫細胞多角体はウイルス保護材として高い安定性を持つ。多角体結晶の細胞内生成プロセス時にCO放出分子を共結晶化させることで、COガス放出蛋白質結晶を細胞にワンポット合成する手法の確立を目指した。 遺伝子工学的手法を用いて、錯体配位を促進するヒスチジン残基を持つ多角体変異体結晶をデザインした。本変異体を発現するウイルスを昆虫細胞に発現させ、さらに培地にカルボニル錯体を添加することで、CO放出分子―多角体共結晶を得た。各種分光測定によりCO放出分子が内包されていることを確認した。さらに、リゾチーム結晶と同様の手法を用いて、HEK293細胞の転写因子活性制御が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に見出した一酸化炭素(CO)分子放出材料の知見を利用し、本年度は本材料を用いた細胞へのCO分子導入および細胞機能の制御を行った。このことは、当研究者が創製した機能性材料が化学分野のみならず、細胞科学分野に応用可能であることを意味している。またガス分子放出蛋白質結晶の細胞内合成という、非常にチャレンジングなテーマにも取り組み始めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)光駆動型のCO放出システムの構築および、(2)他の蛋白質結晶を用いたCO放出材料の調製を進める。(1)のシステムを利用することで、細胞へのCO導入の量、タイミングの制御を行い、細胞内CO反応の詳細な追跡およびCOの細胞内シグナル伝達作用の解明を目指す。また(2)を利用することで、架橋化を用いないCO放出蛋白質結晶の簡便な調製法確立を目指す。
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