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2013 年度 実績報告書

真の天然の水酸化鉄である微生物生成水酸化鉄が微量元素の環境挙動に与える影響の評価

研究課題

研究課題/領域番号 12J07248
研究機関広島大学

研究代表者

菊池 早希子  広島大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード水酸化鉄 / ヒ素 / ゼータ電位 / Bioenic iron oxides / 表面積
研究概要

微生物由来の水酸化鉄(Biogenic iron oxides : 以下BIOSと記す)は天然で普遍的に存在する鉱物である。また、BIOSは共に高い吸着能を示す水酸化鉄と有機物の混合体であり、吸着を通して微量元素の挙動を支配する物質といえる。一方で、これまでの研究ではBIOSを模擬する物質として無機合成水酸化鉄が使用されるのみであり、BIOSを使用した吸着実験は少ない。そこで、本研究ではBIOSへのヒ素吸着反応を解明し、それらの結果を無機合成鉄と比較することで、BIOSが持っ微量元素吸着反応をより深く理解すると共に、BIOSの吸着特性を生み出す要因を明らかにすることを目的とした。昨年度の研究で、BIOSは無機合成鉄と同様のヒ素吸着構造を持つが、ヒ素吸着量は無機合成鉄より少ないことがわかった。そこで本年度はBIOSおよび無機合成鉄の(A)表面電荷, (B)表面積を比較することで、BIOSの吸着挙動が無機合成鉄より少ない原因の解明を目指した。
得られた結果は以下の通りである。
1. BIOSの表面電荷は、無機合成鉄と比べ負帯電し始めるpHが低い
無機合成水酸化鉄はpHが8以上の条件において正に帯電しているが、BIOSはpHが4以上で負に帯電していた。
2. BIOSの表面積は無機合成鉄より小さい
BIOSは非常に細粒な水酸化鉄から成り、電子顕微鏡下で観察される粒径サイズは無機合成鉄よりも小さいが、表面積は無機合成水酸化鉄232m_(2)/gに対し, BIOSは174m_(2)/gであった。
以上の結果より、BIOSは陰イオンであるAsと静電的に反発を起こすことに加え、ヒ素吸着サイトも減少することで無機合成鉄よりヒ素吸着が減少すると示唆される。このような結果を生み出す背景には、BIOSに含まれる有機物と水酸化鉄の相互作用が考えられる。つまりBIOSを介した微量元素の吸着作用について考える際、BIOSに含まれる水酸化鉄、有機物が持つ個々の性質や粒径サイズに加え、水酸化鉄と有機物の相互作用の考慮が重要であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は昨年度の実験から得られた結果をより発展させ、BIOSの吸着特性を生み出す理由を詳細に明らかにすることができた。よって目標は充分達成できたと考えている。

今後の研究の推進方策

本年度までの研究では、BIOSへのヒ素吸着反応について明らかにしてきた。このように、BIOS沈殿時に生じる吸着反応を理解することはBIOSを介した微丑元素の循環を考える上で極めて重要である。よって、当初の研究方針では、ヒ素吸着の表面錯体モデルを構築することが今後の予定であった。しかし、BIOSは微生物により分解されやすいことも指摘されており、BIOSを介した微量元素の吸着挙動を総合的に理解するためにはBIOS沈殿後の(1)有機物分解、(2)鉄鉱物種の変化を考慮することが必須であるとの着想に至った。そこで、今後はBIOS沈殿後の物質変化にっいても注目し、天然で採取したBIOS堆秘物を対象として、BIOSが鉱物種変化、有機物分解を伴った際のヒ素吸着挙動について考察する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of Biogenic Iron Oxides Collected from the Newly Designed Liquid Culture Method using Diffusion Chambers2014

    • 著者名/発表者名
      S. Kikuchi, H. Makita, K. Takai, N. Yamaguchi, and Y. Takahashi
    • 雑誌名

      Geobiology

      巻: 12 ページ: 133-145

    • DOI

      10.1111/gbi.12073

    • 査読あり
  • [学会発表] Spatial changes of bacterial community and mineral species along chemical gradient in iron-rich sediment2013

    • 著者名/発表者名
      S. Kikuchi, H. Makita, K. Takai and Y. Takahashi
    • 学会等名
      International Society for Environmental Biogeoche mistry
    • 発表場所
      中国
    • 年月日
      2013-10-17

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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