研究概要 |
本研究の目的は,手技に応じて適切な力で運針結紮可能な小児内視鏡外科手術支援システムの構築である.既存の手術支援システムのほとんどが成人外科の内視鏡外科手術を対象としている.しかし,成人外科と小児外科とでは体の大きさが異なるだけではなく,臓器の強度や症例も異なる.よって小児外科においては成人外科よりも繊細な術具操作が要求されるため,小児外科専用の支援システムが求められている.そこで,本研究では縫合動作に関して小児外科特有の動作を定量化し,それに基づいた支援システムの構築を目指す. 初年度は,運針動作において安全性・正確性を評価可能である小児外科特有の評価項目の解明を遂行した.具体的には,小児外科医6名を対象に術者に対して垂直な面の運針をタスクとした実験を遂行した.垂直面運針をタスクとした理由は,小児外科において求められる動作であるが既存の術具では困難な動作であるため,安全性・正確性を示す評価項目の発見が容易であると考えたためである.本実験において,評価項目を明らかにするために既存の術具と申請者が開発した多自由度持針器を用いてタスクを遂行した.この多自由度持針器は把持・先端屈曲・先端回転の3自由度を有しており,研究目的である手技に応じて適切な力で運針結紮可能な小児内視鏡外科手術支援システムに組み込まれているものである.実験結果から,運針時の針の角度,運針対象を引っ張る力,運針の深さが安全性・正確性の評価項目として適していることが明らかになった.次年度はこの知見を基に,術者に安全性・正確性の評価項目をリアルタイムでフィードバックするシステムを構築する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運針動作において安全性と正確性に関する評価項目は,小児外科医を対象とした多自由度持針器を用いた垂直面運針実験より,運針時の針の角度,運針の深さ,運針対象を引っ張る力が適切であることを明らかにすることができた.これは一年目の研究計画の中で最も重要なものであり,今後この結果を基に安全性と正確性を向上するための情報提示手法を考案していく.
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