研究課題/領域番号 |
12J07318
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
但木 謙一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 銀河団 |
研究概要 |
今年度は前年度に解析を進めていた遠方銀河団における星形成銀河探査の研究成果を筆頭著者として論文で発表した。この論文では今からおよそ96億年前に相当する赤方偏移1.6(z=1-6)にある銀河団において、すばる望遠鏡の広視野可視撮像装置Suprime-Camとz=1.6の[OII]輝線を捉える狭帯域フィルターを用いて、視野内に存在する星形成銀河を全て同定し、この銀河団がこれまで知られていたよりも遥かに広がった構造を持っていること、さらに星形成率や星質量などの物理量がこの時代においては環境にあまり依存していないことを報告した。 また海外の研究者との共同研究を通じて、この探査によって構築した星形成銀河サンプルに対してケック望遠鏡による[OII]輝線を狙った可視分光観測にも参加した。 また一方で、一般フィールド領域における星形成銀河探査もさらに進めた。これまではすばる望遠鏡の近赤外撮像装置MOIRCSとz=2.2にあるHα輝線を捉える狭帯域フィルターを用いて星形成銀河探査を行ってきたが、今年度は新たにz=2.5にあるHα輝線を捉える狭帯域フィルターを用いた星形成銀河探査を行い、合わせて100個を超える星形成銀河サンプルを構築した。これらの成果については国内外の学会で発表を行った。 本研究計画はALMA望遠鏡を用いた観測計画であり、今年度は最終的な目標であるCO分子輝線(分子ガスを捉える)観測の時間を獲得することはできなかったが、その前段階として、銀河内のダストの熱放射を捉える観測提案書をAL酷サイクル1期で提出し、最優先課題として採択された。この観測データはサイクル2期以降にCO分子輝線の観測提案を提出する際に実現可能性を実証する上で非常に重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すばる望遠鏡による星形成銀河探査の結果を論文として発表できたことと平成25年度に観測予定であるALMAサイクル1期における高分解能でのサブミリ波観測の時間を獲得できたことからおおむね順調に進展していると評価できる。またz=2.5の原始銀河団におけるJVLAを用いたCO(1-0)輝線観測の時間を獲得できたことも大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
JVLAのCO(1-0)輝線の解析結果を基に、今後は星形成に直結した高励起のCO(3-2)輝線観測をALMA望遠鏡を用いて行う。また空間分解能においても、銀河を十分に空間分解できる0.2-0.3秒角での高空間分解能観測を行うことで、銀河内部にあるガスの分布やその運動を調べる。一方でハッブル宇宙望遠鏡や補償光学を用いた静止系可視・近赤外域の高空間分解能の観測も進め、星形成活動の高まりが銀河同士の合体起源なのか大量のガス流入なのか区別する。
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