研究課題/領域番号 |
12J07319
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺下 愉加里 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 核移植 / アクチン重合阻害 / クローン胎盤異常 |
研究概要 |
クローン胚新規活性化法によるクローン出生率の改善 核移植胚の作製には、多くの過程を要する。ここでは、核移植直後に偽極体が放出されて染色体を喪失することを防ぐ方法に着目した。従来法では、核移植直後、サイトカラシンB(CB)処理を活性化開始と同時に始めている。しかしCBにはその後の発生に対する毒性があり、6時間以上の処理は発生阻害することが知られている。そこで申請者は、G-actinと結合してアクチン重合阻害をするLatnmculin A(LatA)の偽極体放出抑制に対する有効性を評価し、またLatAが核移植胚に及ぼす影響を調べた。はじめに、LatAの最適濃度を検討し、5μMが、偽極体放出に必要最低限の濃度であることを決定した。次に、細胞骨格状態をF-actinを染色することにより調べた。結果、LatAを用いて偽極体放出を抑制した場合、CBを用いた時と比較してF-actinの卵細胞質中における異常な局在が減少し、受精胚での場合に近づいていることが分かった。さらに、核移植胚の正常性を、産仔までの発生率を算出して評価した。結果、CBを用いて作製した核移植胚と比較し、有意に出生率は増加した(p<0.05)。クローン異常の1つとして明らかな、肥大胎盤について、LatAを用いた場合に重量が減少する傾向にあったため、パラフィン切片を作製し、HE染色を行った。しかしながら、クローン胎盤の構造異常は全く改善されていなかった。また、F-actinの局在の結果より、LatAは1細胞期の細胞骨格状態に対する毒性が低いことが示唆されたため、6時間以上の処理時間も可能であるかどうかを調べた。核移植胚は活性化と同時にTSA処理も開始し、その時間が10時間であるため、LatAをTSAと同時に10時間処理することを試みた。そのことにより、活性化6時間後の培地交換を省略ことすることができ、さらにクローン出生率もLatA6時間処理の場合と比較してもさらに増加させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クローン胚の新規活性化法については、LatAを用いて様々な要素を検討し、方法を最適化した。そして完成したこの新規クローン胚作製法は、クローン研究を行っている他の研究室にも評価され、従来法にとって代わられつつある。さらに、ヒストンメチル化および脱メチル化についても3種の試薬のクローン胚への効果は検討済みであり、次年度に計画していた遺伝子発現の解析等にも取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
DNAダメージの修復過程に着目した初期化機構の解明については、クローン出生率が40%近くにまで飛躍的に改善することもあったが、微量のUVを再現性よく確実にドナー細胞核へ照射するのが困難であり、現在の方法で解析を続けることは正確性に欠けると判断し、中断した。しかしながら、出生率を確実に上げることに成功したLatA新規クローン胚作製法により作製したクローン胚を用い、産仔までの発生に影響を与えるものをライブセルイメージングで解析中である。さらに、クローン動物にみられる異常の原因は主にエピジェネティックに不完全な初期化であると考えられているため、LatAがエピジェネティック修飾に与える影響、また、エピジェネティック修飾を強制的に変化させた場合のクローン胚発生への影響を調べ、クローン研究への新たなアプローチを探る予定である。
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