研究課題/領域番号 |
12J07351
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
秋田 鉄也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 進化 / ゲノミクス / 集団遺伝 / 種分化 / バクテリア / 相同組み換え / 適応動態 / セントロメア |
研究概要 |
私は、「進化動態の数理モデル」と「オミクスデータの利用」を両輪とした進化理論の構築を目指している。2013年度は、以下の3点について取り組んだ。 1 : セントロメアは、真核生物の細胞分裂時に染色体を娘細胞に均等分配する機能を持った反復破裂からなる染色体領域である。本年度は、分子メカニズムを組み込んだ数理モデルを構築し、セントロメア領域における反復配列とその結合サイトとの共進化過程が生殖隔離を引き起こすことを理論的に明らかにした(投稿準備中)。 2 : 大腸菌やピロリ菌に代表される原核生物(以下、バクテリア)は、生育する環境に応じてゲノム構成を大きく変化させる。そのような環境適応は、真核生物と共通するような通常の突然変異のみならず、種内および種間による遺伝子の移動と取り込みによって駆動されている。多くのバクテリアでゲノムデータが明らかになっているが、そのような特異的な種内変異パターンを有効に利用するための基礎モデルは皆無である。本年度は、特に複数の水平伝搬過程が混在するときの取り扱い、および、異なる種からDNA断片を組み込む過程について、コアレッセント理論として記述した。これらはすべてC言語で記述されたシミュレータとして実装された(投稿準備中)。また、この過程と関連した実験進化についても実施中である。 3 : ある機能を特異的に発現する環境を網羅的に調べることは、その生物の研究基盤を提供するのみならず、有用な物質の生産に直接寄与する。一方、そのような関係性が特定されたとしても、その物質生産に必要な資源が目的物質へと配分されない限り、有用とは言いがたい。本研究では、微細藻類の炭化物を対象として、その貯蓄の進化について理論的に調べ、どのような環境下で発現の網羅的解析を実施すべきかの指針を与えた(国際誌に投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の研究1について、海外の研究者との議論を通じた大幅な方針転換があったため、投稿が遅れている。研究2についても、理論構築およびシミュレータ実装に時間がかかり、投稿が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究1については、理論構築は完了したので、数値計算および論文執筆を実施する。研究2については、構築した理論およびシミュレータを用いて公開されているゲノムデータに応用し、既存の理論との比較等を実施する。また、実験進化から得られた配列情報を解析して論文執筆を実施する。
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