研究実績の概要 |
採用期間中に開発したマイクログラム量の試料を含む溶液に細孔性錯体結晶を浸して包接するだけで、単結晶X線構造解析のための試料が調製できる手法「結晶スポンジ法」(Nature, 2013, 495, 461)を軸不斉化合物の絶対構造解析、NMRなどでは構造決定が難しい複雑な構造の化合物の構造解析へと応用した。 軸性不斉を有する多様なビアリール類5μgをトリス(4-ピリジル)トリアジン(TPT)とZnI2からなる細孔性錯体[(ZnI2)3(TPT)2]n (結晶スポンジ)の細孔内に包接させた。包接された軸不斉化合物は、結晶構造解析の結果、その絶対構造までも容易に決定することができた。この成功により、結晶スポンジ法が軸性不斉化合物の絶対構造決定に非常に有効であることが示された。 また、多置換ヘテロアレーンなどのNMRなどでは構造解析が難しい化合物についても、同様に結晶スポンジ法を用いることで、その置換位置を簡便かつ迅速に決定できる事が分かった。これは、有機合成の現場で手間のかかる2次元NMRなどを駆使して構造解析を行わなければならなかった化合物でも、結晶スポンジ法を用いれば迅速に解析出来る事が示された。
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