研究課題/領域番号 |
12J07370
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 早紀子 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 神経発生 / 運動ニューロン / 軸索分枝 / プロテアーゼ / 神経筋接合部 / シュワン細胞 / 分化 |
研究概要 |
Damae-induced neuronal endoetidase (DINE)のプローアーゼ活性評価 DINEは、発生期の運動ニューロンで豊富に発現が認められる膜一回貫通型メタロプロテアーゼである。DINEノックアウトマウス(KO)は横隔神経の軸索分枝形成異常により生直後死に至る。DINEはAβ分解酵素であるNeprilysinと同じファミリーを形成するが基質は同定されていない。そのため、まずDINEが生体内でプロテアーゼとして機能するか否かを確かめる必要があった。そこで、DINEトランスジェニックマウス(Tg)を用いたKOのレスキュー実験を行った。発生期脊髄運動ニューロン特異的なHb9プロモーター制御下で野生型DINEまたはプロテアーゼ活性部位変異型DINEを発現する二種類のTgを作製した。これらのTgをKOと交配すると、野生型TgはKOの表現型をレスキューできたが、変異型Tgはレスキューできなかった。この結果から、DINEが生体内でプロテアーゼとして機能することが明らかになった。 DINEを介した軸索-シュワン細胞間相互作用 DINEがプロテアーゼ活性を有することが示されたことから、DINEによって分解された基質が周囲の環境に作用し、軸索分枝を制御する可能性が考えられた。神経再生過程においては、軸索の伸張やガイダンスにシュワン細胞が大きく関与する。そこで、発生期の軸索分枝の制御に、DINEの基質を介した軸索-シュワン細胞間相互作用が存在すると仮説を立て、DINE KOを用いて胎生期のシュワン細胞の表現型について比較することにした。現在は、シュワン細胞の分化状態及び軸索に対するシュワン細胞のアラインメントについて評価しているところで、KOと野生型々ウスに差があう傾向が得られている。今後はTgを用いてこれらの現象とプロテアーゼ活性の必要性についても評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画に従って、昨年度作製したDINE Tgのキャラクタライゼーションを進め、トランスジーンの十分な発現量と期待通りの組織特異性をそなえた有力なラインの選別を行った。このDINE TgとDINE KOを用いて、DINEが胎生期運動ニューロンにおいてプロテアーゼとして機能することを証明する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
DINEのプロテアーゼ活性の重要性が証明されたことから、DINEによって分解された基質が関わる軸索分枝のメカニズムについて、シュワン細胞に着目して研究を進める。通常のマウスとノックアウトマウスに対してシュワン細胞の分化に関係する分子の発現に差があるものをRT-PCR法や免疫組織化学を用いて広く探索する。またシュワン細胞とニューロンとの相互作用を培養系を用いて形態学的に評価する。さらにこれらと並行して、野生型DINE TgによってレスキューされたDINE KOが生後も生存し続けることを利用し、これまで観察することのできなかったadultマウスにおけるKOの表現型探索を行う。またDINEは神経再生関連分子として同定されたものであるので、このマウスを用いて軸索再生におけるDINEの機能解明についても取り組んでいく。
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