研究課題/領域番号 |
12J07393
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅山 いつき 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 現代演劇 / 身体論 / 舞台芸術 / 国際交流 / 日本文化 |
研究概要 |
本研究はアングラ演劇がどのようなプロセスを経て身体論を築いていったのか海外演劇や同時代の思想との影響関係から明らかにすることを目的としている。本年は寺山修司が主宰した演劇実験室・天井桟敷の海外公演に関する資料調査を三回に分けて行った。また学会発表を行い、博士論文の成果発表に代えた。三回の寺山調査の内二回はオランダ在住の個人コレクターの自宅を訪問し、寺山の蔵書調査および上演・上映回数の多かった作品を中心に関連資料の調査を行った。例えば『毛皮のマリー』(1969年エッセン公演、1970年ニューヨーク公演)、『盲人書簡』(1973年ポーランド公演、1974年東京公演)、『奴婢訓』(198O年京都公演)をはじめとする海外公演に関する約600点の資料を閲覧することができた。さらに、アメリカ・ニューヨークへ赴き、ラ・ママ実験劇場併設アーカイブにおいて『毛皮のマリー(LA MARIE VISION)』(1970年7月)、『奴碑訓(DIRECTION TO SERVANTS)』(1980年6月)に関する資料を閲覧・撮影を行った。同時にアーカイブ担当者であり、『毛皮のマリー』に出演した経験を持つオズワルド・ロドリゲス氏より当時について話を伺うことができた。演劇実験室・天井桟敷はいち早く海外公演を勢力的に行った集団である。『毛皮のマリー』などは上演国でオーディションを行い、現地の人びとを巻き込む形で上演された。それ以外の作品においても寺山は集団による共同制作を重んじており、即興性を重視した。本年の3回の調査によって寺山が作成した箱書き(場面転換を記したもの)、照明・音響のキューシートなど未公開の資料を閲覧することができたが、寺山が即興性を重んじる一方で実際の公演は入念な準備と精緻な構成の上に成立していたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)マニエリスム芸術と身体表象の比較分析、(2)グロトフスキーと鈴木忠志の影響関係分析、(3)寺山修司の海外公演調査という三つの柱を立てており、本年は(3)に関わる調査を進め、作品分析の素材となる資料を十分収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きアングラ演劇の身体論について考察するが、当初立てた三点にこだわらず、本年収集することのできた寺山資料を基軸に研究の幅を広げていきたい。また、次年度以降、紀要論文等で成果発表を行う予定である。
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