研究課題/領域番号 |
12J07444
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 詩織 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 在宅療養 / 服薬アドヒアランス / センサネットワーク / 双方向 |
研究概要 |
在宅療養患者が医師の処方通りに服薬できないことは社会問題である。本研究では、患者の服薬行動に起因する"服薬アドピアランス"に注目し、ICTを利用して在宅療養患者自身の自発的な服薬を支援する研究を遂行している。現在の在宅療養患者宅や居宅介護支援施設で実施されている服薬管理状況について、在宅療養量的調査後、開発中の双方向服薬支援システムの実証実験を大阪府吹田市の医療機関を利用している患者7名宅にて行っている。本研究での仮説は以下の3点である。 仮説1.服薬アドビアランスの向上のためには、自身の服薬状況の見える化が有効である。 仮説2.服薬アドビアランスの向上のためには、医療者からの励ましや友人とのゲーム的要素などのフィードバックが有効である 仮説3.センサネットワーク連携ライフログシステムを導入することによる経済的な負担は、そうしなかった場合の社会的コストに比べて小さいため、保険制度等に組み入れることで、経済的維持性を確保することができる アンケート調査、実証実験により明確化したことは以下の3点であった。 1.在宅療養にて服薬支援をするケアマネジャーと医師との間には認識の乖離が存在する。 2.センサ付き薬箱の開閉検知により取得したデータを患者の行動分析よりフィルタリングすると、精度は85%になる 3.医療者から患者へのフィードバックを実施することで、継続的に服薬アドビアランスが向上する。 これらの結果から、研究仮説1.2.が立証された。以降の研究では、ICTを用いた服薬支援システムを日本国内にて導入し、運用するにあたり、諸外国と比較を予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目の計画では、在宅療養の現場で実施されている服薬支援状況の量的調査を実施し、さらに双方向服薬支援システムの要求条件を明確にした上で、提案システムの開発、実証実験をする予定であった。7ヶ月の実証実験後、効果の測定と今後の課題の洗い出しを行った。これらの結果をまとめ、論文投稿を2件、対外発表を2件実施したため、研究の達成度して、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究1年目の結果をもとに、ICTを用いた服薬支援システムを日本国内にて導入し、運用するにあたり、諸外国の制度運用、ビジネスモデル事情をサーベイする。ここで想定しているシナリオは、各国に応じてICTの医療制度導入は異なるため、それぞれに応じた導入法がある。そこで、これまでの研究から、日本の医療制度にICTを導入するにあたり、最適な諸外国の制度を抽出する。さらに、米国は、公的な医療制度に頼らず、企業レベルでのビジネスモデルが複数ある。そのため、米国MITの本研究と類似した研究を行っている研究室にて、各国のビジネスモデルを参考に、提案システムのビジネスモデルをシミュレーションする。この取り組みを論文としてまとめ、研究発表や論文誌への投稿を行う。 また、秋からは、過去の研究成果とこれまでの活動をまとめ、博士論文の執筆にあたる。
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