本研究は、在宅療養患者が医師の処方通りに服薬できない問題に焦点をあてて、患者の服薬行動に起因する"服薬アドヒアランス"に注目し、ICTを利活用して患者自身の自発的な服薬を支援する研究であり、以下の仮説を検証する。 仮説1. 服薬アドヒアランスの向上のためには、自身の服薬状況の見える化が有効である。 仮説2. 服薬アドヒアランスの向上のためには、医療者からの励ましなどのフィードバックが有効である 仮説3. センサネットワーク連携ライフログシステムを導入することによる経済的な負担は、そうしなかった場合の社会的コストに比べて小さいため、保険制度等に組み入れることで、経済的維持性を確保することができる 本年度は、主に、米国マサチューセッツ州のハーバード・メディカル・スクールに留学し、本研究の汎用性と社会システムへの導入ヘモデルを検討した。これまでの研究結果から導いた考察は、以下の3点である。 1.) 患者や家族に加えて、患者の服薬支援に直接対策を講じることができる医師とケアマネジャーに患者の服薬状況を「見える化」することで、患者の適切な服薬支援に繋がる。医師の求める服薬状況をケアマネジャーが理解し、患者への支援にとつながるようにするためには、分析データの見せ方や共有方法を考慮するとともに、医師とケアマネジャーの服薬状況の判断基準の乖離を解消することが必要である。 2.) 在宅療養関係者と患者の双方向性を担保したセンサ連携ライフログシステムを導入すると、患者の服薬不良が減少し、一定期間のフィードバック導入以後、患者の服薬不良は改善され、一部の患者では服薬忘れが持続的に見られなくなった。継続的なモニタリングとフィードバックにより、服薬アドピアランスの向上が示された。 3.) センサ連携ライフログシステムを導入する場合にかかるコストは、現在の服薬不良による損失と比べて小さく、経済的に成立すると推測できる。しかし、システムの導入、継続運用には公的機関の介入が求められる。 これらの結果の公表のため、平成25年度は、国内学会発表を1件実施し、公聴会に合格した。
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