研究課題/領域番号 |
12J07446
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平木 十和子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 脳の性差 / エストロゲン受容体 / アンドロゲン受容体 / 性転換 / 魚類 / メダカ |
研究概要 |
脳内で性行動を支配する神経核でメス特異的に発現する遺伝子NPBに着目し研究を進めた。メス特異的なNPBは魚類の性行動を制御する役割をもつという仮説のもとメス特異的NPBの1.発現調節機構2.作用機序3.性行動に対する役割を解明することで、魚類の脳内における性行動の制御メカニズムを明らかにすることを研究の目的とした。1.についてはNPB発現が性ステロイドに調節されるという先行研究に基づき性ステロイド受容体の発現動態を解析したところ、メス特異的NPBニューロンはメスのみで性ステロイド受容体を発現し、その発現はメスでも卵巣除去とアンドロゲン投与によりオス型となることが示された。性行動を支配する神経核において性ステロイド受容体がメスのみで発現することは、メスの方が体内のホルモン状態により性行動に影響を受けやすいことを意味し、性行動の性差を解明する上で画期的な発見である。またここで示された性ステロイド受容体の発現の可逆性は、魚類の性行動の可逆性の要因の一つであると考えられ、魚類の性転換のメカニズムの一端を示すことができた。2.についてはNPBの特異抗体とNPB_GFPトランスジェニックメダカの特異性の評価を行い、抗体が確実にNPB発現細胞と軸索を標識すること、トランスジェニックメダカがメス特異的NPBニューロンのマーカーとして使用可能であることが確認できた。これらは今後のNPBの解析に大きく貢献するツールになると考えらえる。また、NPBの受容体GPR8の発現解析も行い、GPR8がメダカの脊髄で性差なく腹根と背根両方に発現していることを確認した。3.についてはNPBのノックアウト作製の準備として、NPBのオーソログNPCの発現解析を行い、メス特異的NPBニューロンにNPCも発現することが判明した。このためNPCのダブルノックアウトを行う必要性が示唆され、ノックアウト作製のための重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であるNPBの調節機構、作用機序、性行動に対する役割の解明の三つ全てに関して着実にデータを積み重ねることができ、また来年度以降の研究の発展にむけたツールや手法も増えていっているため。
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今後の研究の推進方策 |
NPBの調節機構に関しては本年度までにほぼ全容を明らかにすることができたので、今後はNPBの作用機序、性行動に対する役割についてさらに深く研究を進める。作用機序に関しては、トランスジェニックメダカをもちいメス特異的NPBニューロンの電気生理的活性を測定することで、ニューロンの特性やどのような時に活性化するのかを明らかにする。また、メス特異的NPBニューロンの形態学的な性差についても解析し、ニューロンの活性化度合いによる細胞サイズの変動も測定する。性行動に対する役割については、NPBのノックアウトメダカを作製し、表現型の解析を行う。このために、これまでの計画ではTILLINGを用いるとしていたが、近年さらに簡便で迅速にノックアウトを作製できる方法として注目されているTALENを用いることとする。
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