研究概要 |
乳癌はLuminal-like, Basal-ike, ErbB2過剰発現タイプの3つのサブタイプに大別される。中でもBasal-like乳癌は癌細胞そのものの増殖能や運動性が高いことに加えて、従来の治療標的分子の発現が見られず有効な分子標的治療法が存在せず予後が悪い。本研究ではBasal-like乳癌の発癌および癌悪性化に関する因子を網羅的に解析するため、マウス由来の初代培養乳腺上皮細胞とマトリゲル三次元培養を用いたin vitroスクリーニング系の確立を目標として研究を行った。 まずBasal-like乳癌のcell of originであることが報告されているLuminal前駆細胞の単離を試みた。マウス乳腺fat padを酵素処理し得られた細胞懸濁液をCD45,TER119,CD31で染色して血球や血管に由来する細胞を除去し、残りの上皮および繊維芽細胞を含む画分をCD24,CD49fおよびCD61で展開することでCD24^<high>,CD49f^<low>,CD61^<positive>のLuminal前駆細胞画分をセルソーターによって分取した。このLuminal前駆細胞をマトリゲル上に播種して乳腺構造を模倣した管腔の形成を観察したところ、中空コロニーが形成された。またp53欠損マウスから単離したLuminal前駆細胞においても同様の中空コロニー形成を確認した。 次に遺伝子導入用のレンチウイルスベクターの構築を行った。中空コロニー中のわずかな細胞への遺伝子の影響を観察するために、ウイルス感染細胞が蛍光タンパク質mCherryとDox依存的な遺伝子発現調節因子rtTAを発現し、Dox添加によって目的遺伝子とVenusを発現するようベクターを設計し、実際にウイルスが感染しているmCherry発現細胞においてDox依存的なVenus発現誘導が起こることを確認した。今後は中空スフィアにおける遺伝子の発現と中空構造崩壊を観察するためにポジティブコントロールとしてERBB2を用いて検討を行う予定である。
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