研究課題/領域番号 |
12J07531
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
正田 亜八香 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 重力波 / 検出器開発 |
研究概要 |
本研究では、ねじれ振り子型低周波重力波検出器TOBAの開発を行っている。TOBAとは、干渉計型の重力波検出器に比べ低周波数帯の重力波に感度を持つ地上検出器で、中間質量ブラックホール連星や背景重力波などが主な観測ターゲットである。これまでに最初のプロトタイプが開発され、原理検証や初観測などが行われた。 そこで現在は更なる感度向上のための次世代プロトタイプPhase-II TOBAの開発を行っている。ここでは主に、新たな懸架系の導入、防振系の導入、低温システムの導入を中心に開発を行うが、それ以外にも新たな観測手法の提案、及びこの観測手法を実現するためのシステム構築も行っている。 懸架系では、TOBAの2つの棒状テストマス、及びoptical benchをワイヤーによって懸架する。この時、地面振動などといった雑音がそれぞれに同相に効くように重心の高さやクランプ位置の高さが一致するように設計を行った。これによって、同相雑音除去が働き、地面振動などといった雑音の低減に期待できる。また、クランプ位置と重心を極力近づける事で垂直方向の回転の共振周波数を下げ、新たな観測手法を採用できる構成となっている。現在までに設計・製作が完了しており、現在は評価を行っている。 また、Hexapod型の能動防振装置を開発した。これは1~10Hzという低周波数帯で防振を行う事ができるだけでなく、加振を行う事も可能なため、これを用いて懸架系の詳細な評価が可能になると考えている。これらに加え、低温システムの開発も行った。これは、既存の真空槽を改造して4Kまで冷却することができる低温システムを導入したもので、真空槽のすぐ内側に80Kのシールドを持ち、内側のコンフィグレーションを自由に変える事が出来る汎用性の高いものである。低温システムは現在までに納品と簡易テストが終了しており、冷却部は4K以下に冷える事が確認されている。今後はレーザーファイバなどセンサーのテストやアクチュエータのテストを行った後、システム全体を組み込む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、今までの観測結果や成果をまとめ、Physical Review D誌に論文を投稿した。 また、実験についても、懸架系、防振系、低温系と、検出器の主要となるパーツそれぞれの開発がほぼ終了した。今後はこれらを組み合わせて装置全体の評価に入ることができる段階であるため、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発した検出器の主要パーツを組み合わせ、検出器全体の性能評価を行っていく予定である。主には、防振性能や同相雑音除去比の評価、低温システムにおいてのセンサーやアクチュエータの動作評価、低温における懸架ワイヤーのQ値評価などを行う予定である。 また、これらの装置を用いた重力波探査も行う予定である。その際には、新たに提唱した観測手法を用いて3つの独立した重力波信号を取得し、これらを組み合わせた解析パイプラインを構築し、解析を行う予定である。
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