研究概要 |
研究実施計画にあるように、本年度は次の3つの研究を行った : (i)ガラス化を示すとされる格子模型、(ii)多体系における変分原理、(iii)乱流現象における大偏差関数。このうち(i)と(ii)について、いくつかの成果を挙げることが出来たので以下それを報告する。 (i). 我々は、KCMに対して得られていた公式を、量子相転移を示すp-spin平均場イジング模型に適用し、量子相転移とガラス転移の間の共通の構造を探る目標を立てた。実際に、我々の方法を適用することで、Bapst-Semerjianが得ていたスケーリングの公式[V. Bapst and Semerjian, J. Stat. Mech. 2012, PO6007]を再導出した。また、KCMsに対して得ていたスケーリング関数の表現が、この量子相転移の場合にも適用出来ることを発見した。本年度も、Frederic van Wijland教授のもとを2013年11,12月、及び2014年2,3月に訪問して共同研究を行った。現在、結果を論文にまとめている段階である。またこの研究内容は、二つの国際会議(学会発表の欄の下二つの発表)において発表された。 (ii). 我々の既に得ていた変分原理は、数値実験や実際の実験で用いる際には有用とは言えなかった。計算の手数が多くなり過ぎてしまうという問題を抱えていたためである。変分原理を用いると、時間平均量に共役な外場hに物理的意味を持たせることが出来る。問題は、このh軸上の変化をどのように行えば良いかを知るためには、高次のゆらぎが必要となる点である。これを解決するために我々は、h軸上の測定とフィードバアックからなるダイナミクスを提案した。これにより、少しずつの変化で目的のレアイベントサンプリングを示す系に到達することが出来る。この手法をまとめた論文は、Phys. Rev. Lett.誌に掲載された[雑誌論文の一番上]。また、いくつかの会議において成果を発表している(学会発表の1,2,3)。
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