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2013 年度 実績報告書

中世和歌史論

研究課題

研究課題/領域番号 12J07542
研究機関鶴見大学

研究代表者

木村 尚志  鶴見大学, 文学部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2012 – 2014-03-31
キーワード歌枕 / 名所 / 宗祇 / 『名所方角抄』 / 善光寺 / 諏訪神社
研究概要

中世和歌における観念と政治的・文化的現実の関係を、歌枕にスポットライトを当てて明らかにする、という目的に照らし、室町時代における能と連歌の歌枕観念の結びつきを、宗祇作とされる『名所方角抄』の分析を通して明らかにした。その中で、連歌師にとっての歌枕は、そこへ自らが行く感覚があり、そこから『名所方角抄』の、旅の道順に沿った名所の配列が生まれ、能の道行や名所教えにもそうした連歌師の歌枕観念の反映が見られることを論証した。と同時に、『名所方角抄』が宗祇作である可能性を示唆する事実を積み上げ、今後の議論の土台を提示した。いずれにしても宗祇の名を冠する版本が普及した江戸時代には、宗祇作であるが故に、名所図会の先駆けとなる旅行案内書として珍重されたであろうことが想定される。
また、信濃国が、平安末期から院政期以降の歌人たちが多くの羈旅歌を残し、歌枕として多くの地名が詠まれ、文学的に豊かな実りをもたらした土地である理由を、善光寺・諏訪神社の信仰、駒迎の駒の産地としての文化、東山道の宿駅の機能といった多角的観点から考察する下地を作るために、長野県全土を実地踏査した。その結果、歌枕は、宗教・地政学・儀礼等々の媒介要因が相互に結びつき、人々の連帯を生む文化的装置のようなものであることを仮説として立てるに至った。例えば、鎌倉初期の苅萱道心とその子石童丸の遁世譚や、戸隠山の稚児と西行が連歌をかけあい、西行が戸隠の稚児たちは神域にいるだけあってただものではないと驚嘆したという説話などは、善光寺信仰の拡がりをもたらし、室町時代の能山姥や柏崎・土車などを生んだのであろう。また諏訪神社は男が御巫をつとめる唯一の神社であり、鹿を贄として捧げる殺生を認めることから、武家の間に信仰を集め、鷹百首という鷹狩の鷹について詠まれた特殊な百首歌も、この諏訪信仰に導かれて京や鎌倉などと繫がっていったのであろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初は逢坂関・不破関・清見関といった関所と文学の関わりを、実地踏査を通して考える予定であったが、その日程が組めずに実現できなかったため。

今後の研究の推進方策

和歌を中心としながら、そこに連歌・能・宗教といった別の要因を絡めることで、歌枕についての議論を活性化し、歌枕が生成し、または再生する仕組みを立体的に浮かび上がらせるようにしたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 宗祇『名所方角抄』について2013

    • 著者名/発表者名
      木村 尚志
    • 学会等名
      日本文学協会 平成二五年度研究発表大会
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      2013-07-07

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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