研究課題/領域番号 |
12J07546
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 千裕 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ファイトプラズマ / 環境応答 |
研究概要 |
細胞寄生性細菌であるファイトプラズマは、そのライフサイクルにおいて植物および昆虫を宿主とする。そのためそれぞれの宿主細胞内の全く異なる環境に適応するシステムを備えていると考えられる。そこで、宿主のスイッチングに伴い変動する遺伝子を網羅的に解析するため、感染初期におけるファイトプラズマ遺伝子のトランスクリプトーム解析を行い、その結果をもとに転写因子や膜タンパク質など感染に重要であると考えられる遺伝子を選定した。本年度は、選定した遺伝子のリアルタイムPCR解析を行い、トランスクリプトーム解析の結果の検証を試みた。具体的には膜タンパク質遺伝子であるPAM289遺伝子、転写因子であるproD遺伝子の発現量は昆虫感染時に増加し、細胞内の浸透圧調節に関与するチャネルであるmscL遺伝子、分泌タンパク質遺伝子であるPAM486遺伝子の発現量は植物感染時に増加した。これらの結果はトランスクリプトーム解析の結果と一致した。次に、植物-昆虫間ホストスイッチングに伴って遺伝子の発現を制御するメカニズムを解明するため、トランスクリプトーム解析およびリアルタイムPCR解析の結果、昆虫感染時に発現量が増加することが明らかとなったrpoD遺伝子に着目した。RpoDは遺伝子のプロモーター配列を認識し、特定の遺伝子の転写を正に制御する転写因子である。proD遺伝子は他の細菌では発現が変動しない遺伝子として知られている。このことからファイトプラズマの植物-昆虫間ホストスイッチングにおいてrpoD遺伝子の発現量の変化は非常に重要な意味を持つのではないかと考え、RpoDが認識するプロモーター配列を特定することを目的として解析を進めた。本年度はまずin vitro転写系の確立に着手し、in vitro環境下でファイトプラズマのRpoDが転写活性を有することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、形質転換系を利用した研究手法を応用することができない難培養性細菌「ファイトプラズマ」の遺伝子発現機構を、ポストゲノミクス解析手法を駆使することにより明らかにすることを目的としている。2年目である平成25年度は、前年度に行った網羅的な解析の次のステージとして、当初の計画通り転写因子の一種であるシグマ因子「RpoD」に着目した解析に着手することができた。この成果は、3年目に行う予定である「シグマ因子の発現を制御するメカニズムの解析」につながる成果であることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立したin vitro転写系を用いて、シグマ因子RpoDが制御する遺伝子を解析し、RpoDが認識するDNA配列を特定する。その結果をもとにファイトプラズマゲノム上にRpoD認識配列をマッピングし、RpoDによって制御される遺伝子を網羅的に予測する。さらに、RpoDの発現量を制御するメカニズムを解析するため、同じくin vitro転写系を用いて、rpoD遺伝子の上流に結合する転写因子を特定する。
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