本研究は、19-20世紀転換期ラテンアメリカ文学(以下ラ米文学)におけるヨーロッパ芸術思潮の「受容」(どのように紹介され、受け入れられたか)と「展開」(受け入れられたものが作品にどのように取り込まれ、活かされたか)の状況の調査を通じて、この時期のラ米文学の持つ独自性を、地域の枠内で考察するに留まらず、ヨーロッパの芸術思潮との関係からも捉え、国や言語を越えて展開する世紀転換期の芸術動向におけるラ米文学の位置づけを明らかにしようとするものである。受容研究の手法は、主に20世紀初頭以前のスペイン語圏の文芸雑誌や、比較対象となる19世紀から20世紀初頭のヨーロッパ文学、定期刊行物等の収集・分析である。展開研究は当該時期のラ米文学作品の幅広い収集と精読を中心とするが、いっそう客観的な考察を行うため、19世紀一般と、1920年代から40年代までのラ米文学についても読み込みを行っている。 平成26年度は主に受容研究を行った。読解や分析の対象とした作家は、J・マルティ(1853-1895、キューバ)、M・グティエレス・ナヘラ(1859-1895、メキシコ)、J・デル・カサル(1863-1893、キューバ)、J・アスンシオン・シルバ(1865-1896、コロンビア)、R・ダリオ(1867-1916、ニカラグア)、L・ルゴネス(1874-1938、アルゼンチン)、J・ヘレラ・イ・レイシグ(1875-1910、ウルグアイ)等。資料の所在等の関係で国内での十分な研究遂行が難しいことから、平成25年11月以降スペインで学術調査を実施しており、平成26年10月からはマドリード・コンプルテンセ大学のモデルニスモ研究グループに参加して研究を進めている。
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