研究課題
植物ウイルスは化学農薬による防除が不可能なため、その防除は抵抗性遺伝子の利用に大きく依存している。従来用いられてきた種特異的gene for gene抵抗性遺伝子は、対応するウイルス種に特異的なウイルスタンパク質を認識し抵抗性を発揮すると考えられている。しかし、こうした抵抗性はウイルスの変異によりたびたび打破されてしまう点が問題であり、持続性が高く、より広域な抵抗性を発揮しうる遺伝子の探索が喫緊の課題であった。本研究は植物が持っていると考えられる、ウイルスの共通分子パターンを認識して発現する広域抵抗性反応の探索、さらにその機構の解明を目的としている。今年度はATCCより種々のウイルスを取り寄せ、そこから抵抗性誘導ウイルス因子候補ライブラリを構築した。まず、35Sプロモーターの下流にplum pox virus-GFP(PPV-GFP)とRFPを搭載したプラスミドを作出した。RFPの下流には35SプロモーターとTOPO配列を挿入した。次に、取り寄せたウイルスに対し、NCBIのウイルス配列情報をもとにプライマーを設計し、ウイルスのタンパク質コード領域、非コード領域をPCRにより増幅した。得られた増幅産物を先に作出したプラスミドのRFP配列下流にTOPOテクノロジーを用いてクローニングし抵抗性誘導ウイルス因子候補ライブラリとした。得られたライブラリはNicotiana benthamianaとアグロバクテリウムを用いた一過的発現系により、発現を確認した。本研究成果で得られたライブラリを、今後シロイヌナズナプロトプラストに導入することでウイルス抵抗性誘導因子を探索できる。また、PPV配列を他のウイルス配列に入れ替えることで様々なウイルスに対する抵抗性を検討することができる。
2: おおむね順調に進展している
ウイルス抵抗性誘導因子候補ライブラリの構築を終え、実験の準備を整えた。これは申請した研究実施計画の通りであるため、現在のところ研究はおおむね順調に進展していると判断する。
抵抗性誘導ウイルス因子候補ライブラリをシロイヌナズナプロトプラストに導入し、PPV-GFPの蛍光を蛍光プレートリーダーで測定する。ウイルス因子をクローニングしていないプラスミドによるPPV-GFPの蓄積量と比べて、GFP蛍光が弱いものを特定する。さらに、特定した抵抗性誘導ウイルス因子の塩基配列やアミノ酸配列、モチーフ、機能ドメイン、修飾などに共通のパターンがないかをweb上のデータベースなどを用いて比較解析する。
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