本研究の目的は、人の身体に備わっている協応構造の組織化に着目し、キャリングビークルを用いることで「巧みな運動」と呼ばれる高度な運動をモデル化することにある。今年度は、主に以下の3点について重点的に研究を行った。 1点目は、COLUMNと呼ばれるキャリングビークルの内部状態やコントローラからの入力に対して、挙動と操作者の意図(ゴールの設定など)の差異を時系列的に整理した点である。その結果、移動方法に数種類のパターンが見られるものの、ある種の文脈がそれぞれのパターンにおいて存在することがわかった。なお、COLUMNの状態とタイミング、操作の順序を再現することで、COLUMNの任意の移動に成功している。これらの結果は、IJSRにて査読中であり、またHCII2015にて発表予定である。 2点目は、COLUMNの制御を行うためのリカレントニューラルネットワーク(RNN)の構築である。COLUMNの制御に従来のRNNを直接用いることは可能ではあるが、そこに協調のモデルといった要素を共在することはできないため、既存の運動モデルと併用可能なRNNの改良が必要であった。こうした課題を解決するため、特定の運動モデルと共存可能なRNNを、学習則に遺伝的アルゴリズムを介在することで実現するアプローチを行った。構築したRNNについて、未だいくつかの評価が必要であるが、その結果についてはJSAIに投稿予定である。 3点目は、キャリングビークルINAMOを用いたものである。本年度は、人とINAMOが「遊び」を媒介に関係を構築し、人-ロボットが一体となって一つのシステムを作り出すメカニズムについて議論を行ってきた。制約条件や振る舞いを工夫することで、COLUMNと同様に多人数協調を扱うキャリングビークルとしての用途、あるいはユーザーとロボットとの間で創発的な「遊びの場」を作り出すといった研究プラットフォームとしての可能性について議論を行い、EC2014及びHAI2014にて発表を行った。
|