研究課題/領域番号 |
12J07636
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
道喜 慎太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 膜輸送体 / ペプチド |
研究概要 |
本年度は、GkPOT単独の結晶構造により示唆された基質認識やプロトン化部位に重要な残基をアラニンなどに置換した変異体を作成し、蛍光基やRIで標識したジペプチドを用いた輸送活性測定を行うことで、「基質とプロトンが同じ部位で認識し輸送される」という仮説の検証を試みた。その結果、いくつかの残基において基質認識に重要な残基や基質輸送に必須な残基が明らかになり、基質とプロトンが同じ部位で認識されることがGkPOTの構造変化を制御している可能性が示された。 また、蛍光基質の輸送活性測定系を利用して蛍光基質といくつかの化合物との競争阻害実験を行い、より高親和性でGkPOTに結合して輸送を阻害する基質アナログを探索した。その結果、いくつかの基質アナログにおいて、蛍光基質との競争阻害が見られた。これらの得られた基質アナログと共結晶化を行うことで、GkPOTと基質アナログとの複合体の結晶構造を得ることを試みた。基質アナログの結合により構造変化が起こる可能性も考えられたため、結晶化条件の探索は初期スクリーニングから行い、微結晶を得ることに成功した。その後、1000種類以上の結晶化条件で最適化を行うことで良質な結晶が得られた。放射光施設SPring-8において、これらの良質な結晶から分解能2.4Åのデータセットを収集することに成功し、GkPOT単独の結晶構造を用いた分子置換法により、基質アナログとの複合体の結晶構造を明らかにした。複合体の構造情報から、基質の結合様式や基質認識に重要ないくつかの残基が新たに明らかになった。これらの構造情報を基にMDシミュレーションや赤外分光法などの共同研究を行うことで、GkPOTがどのように構造変化を起こして基質を輸送するかが明らかになった。現在、これらの成果をまとめ論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、POT単独の結晶構造に加えて新たに基質アナログとの複合体の結晶構造を高分解能で明らかにすることに成功した。その結果、「基質とプロトンが同じ部位で認識し共輸送される」という仮説を立て、いくつかの実験において仮説を裏付けるデータを得た。
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今後の研究の推進方策 |
現在、基質アナログとの複合体の結晶構造を高分解能で明らかにすることにより、「基質とプロトンが同じ部位で認識しこう輸送される」という作業仮説を立てた。構造情報を基に、いくつかの機能解析を行った結果、仮説を裏付けるデータがいくつか得られている。今後は、未だ解明されていない別状態のPOTの結晶構造を明らかにすることにより、より詳細な輸送メカニズムの解明を目指す。
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