研究課題
H25年度においては、光触媒材料(Ga_<1-x>Zn_x)(N_<1-x>O_x)に関する研究について、実験研究者(東京大学大学院理学系研究科化学専攻長谷川研究室廣瀬助教)と共同研究を始め、より現実的な問題解決を目指した研究を行ってきた。H24年度までに行った第一原理計算を用いた研究から、(Ga_<1-x>Zn_x)(N_<1-x>O_x)に可視光吸収に適したバンドギャップを持たせるためには、結晶中におけるZnとNの結合量、及びその結合方向が重要であることが明らかになった。H25年度は、その結論が妥当であるか、妥当であるとしたらZnとNの結合量の制御によって可視光応答性の最適化が可能か、実験的にも検討していただくよう提案した。有用な実験的解析手法のひとつとして考えられるラマン散乱について計算を行い、その結果を提供した。このような実験研究者との議論に基づく共同研究は、どのような系を研究対象としても、現実の複雑な問題において成果を出すうえで必要不可欠なものである。本研究の目的である、量子ドット太陽電池のエネルギー変換効率向上の提案にも繋がる有用な経験を積むことができたと考えている。また、H24年度の12~3月にイタリアに留学し取り組んだDr. Andrea Mariniとの共同研究について議論を進め、Physical Review B誌に第一著者として論文を発表した。本研究で用いた、多体摂動理論的手法に基づいたElectron-Phonon相互作用の計算は、光触媒や太陽電池における光生成キャリアの寿命を計算するために有用な手法であり、本研究を通して一通りの知識及び技術を習得することができた。H25年度におけるこれらの経験から、従来の目標である界面でのキャリア輸送に関する研究に取り組む準備が整ったと考えている。
2: おおむね順調に進展している
H25年度は、量子ドット太陽電池ではなく水分解型光触媒について主に研究を行ったが、光生成キャリアの寿命に関する研究という点において本質的な違いはなく、学会や論文発表、外部の研究者との議論の経験を通して順調に進展していると考えている。
固体表面―量子ドット系に限らず、光触媒半導体―助触媒金属界面など他のキャリア輸送が重要となる系も視野に入れ、これまで身に付けてきた計算手法を適用することで光生成キャリアの寿命について調べる。その結果を通して、光エネルギー変換効率の向上を貝指した材料設計として有用な知見を得ることを目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 139 ページ: 044711-1-044711-8
10.1063/1.4816476
Physical Review B
巻: 89 ページ: 080202-1-085202-6
10.1103/PhysRevB.89.085202
http://www.tcl.t.u-tokyo.ac.jp/publications.html