研究課題/領域番号 |
12J07687
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂本 達也 東京理科大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 熱電変換 / 環境半導体 / マグネシウムシリサイド / プラズマ放電焼結 / 電極接合 / 熱電モジュール |
研究概要 |
本研究は、排熱を実用温度域(400~700℃)で直接電気エネルギーに変換する「熱電発電モジュール」を、環境低負荷な熱電変換材料Mg2Siを用いて、実用レベルまで高出力、高耐久化することを主目的としている。そこで、(1)モジュール基幹部品Mg2Si素子の特性向上、および(II)新規モジュール構造の設計による耐久性向上、という2つのアプローチを検討し、H24年度、H25年度の研究内容を以下に設定した。 (1)高出力化:Mg_2Siの熱電特性向上 (2)高耐久化:Mg_2Siへの不純物添加による高温耐久性付与 (3)高出力化:発電性能向上:発電した電力をより効率良く取り出せる電極材探索 (4)Mg_2Si素子の大量作製方法開発(モジュール作製と評価には多数の素子が必要なためこの項目を設定) (5)高出力・高耐久化:新型発電モジュール構造の探求 本年度(H24年度)は、上記(1)~(5)に関連した内容について、以下の方法で実験を実施し、有用な知見を得た。 (i)Mg_2Siの熱伝導率低減による熱電性能向上:Mg2Si結晶粒微細化 [成果]Mg_2Si結晶粒の微細化(500nm~2μm)による熱伝導率低減を試みた。油性溶媒中で微細化したMg_2Siは、焼結時にMgOのMg_2Si結晶粒界への凝集が生じ、熱伝導率が増加することが明らかとなった。 (ii)Mg_2Siへの不純物添加による高温耐久性付与:高温耐久試験 [成果]Sb添加Mg_2Siを高温長時間大気中で保持した結果、無添加のものより耐久性があることが示され、かつ、焼結体の密度と高温耐久性に有意な相関があり、Sb添加かつ緻密な焼結が不可欠なことが明らかになった。 (iii)発電した電力をより効率良く取り出せる電極材探索:一探針法による接触抵抗測定 [成果]Sb添加Mg_2Siと電極間の接合界面を一探針法により評価し、Ni、CoSi_2系、およびCrSi_2系電極の接触抵抗率の定量値が得られ、実使用上十分良好な電極特性であることが明らかになった。 (iv)Mg_2Si素子の大量作製方法開発:金属粉末の混合によるクラック予防 [成果]大口径Mg_2Si焼結体作製において、特定の金属粉末の混合によりクラックを予防できることが示された。特に、金属粉末選定における重要な物性は融点、電気伝導率、ヤング率であることが見いだされた。 (v)新型発電モジュール構造の探求:熱接合部材の探索 [成果]モジュール表面に「熱接合部材」としてBNペースト(高温側)およびポリウレタンシート(低温側)を設置する構造を提案・評価し、排熱を効率良くモジュールへ入力する有効な手法であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的に挙げた項目について、世界に先駆けて最新の知見が数多く得られた。特に(3)低損失電極材、(4)大口径焼結体作製、および(5)新型モジュール設計にかかる成果については、Mg2Siモジュールの作製と高出力化に直結する有用な結果が得られている。 研究目的に挙げたモジュールの高性能化と高耐久化について、H25年度は以下の4項目を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)【高出力・高耐久化】粗大化Mg2Si焼結体の作製と評価 粗大なMg_2Si粒子を用い、粒界酸化物低減による熱電特性向上と、粒界低減による高温耐久性の向上を狙う。 (2)【高耐久化】不純物添加Mg2Siが高温で耐久性を有する原因の解明 sb添加Mg_2siの高温安定性の原因については未解明な点が残っており、TG-DTA等を用いて明らかにしていく。 (3)【高耐久化】電極材のMg2Siへの拡散に関する評価 様々な電極材料を接合したMg2Si焼結体を作製し、SIMSを用いて高温下での電極の経時拡散を評価する。 (4)【高出力・高耐久化】新型発電モジュール構造の探求 熱接合部材を搭載し、高強度な構造を有する新構造モジュールを作製し、解析および発電特性の実測を通してモジュール特性を評価する。
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