研究課題
【研究1】蛍光指紋イメージングシステムの構築本課題に必要な計測システムを構築した。精密な焦点合わせのための自動Z軸ステージ、均一な照明を得るためのロッドレンズ、蛍光を分光するフィルターを制御するためのフィルターホイール、及びフィルターホイールを観察系に挿入するための特注治具を選定・設置した。また、システム制御ソフトウェアを使用し、光源、CCDカメラ、Z軸ステージおよびフィルターホイールをPCから制御できるようなプログラムを作成した。蛍光指紋イメージングでは多くの波長条件で試料の撮像を行う必要があるが、この測定を自動的に進める計測機を完成させた。計測の自動化により計測時間は1/3程度になり、計測可能なサンプルが増えただけでなく、試料の変性も抑えられるようになった。この計測装置を構築したことにより、測定の手間が減り、画像の精度が大きく向上した。蛍光指紋イメージングを用いた今後の研究を加速させ得るものとなった。【研究2】モデル小麦粉生地中のグルテン・澱粉の定量的可視化手法の開発本研究では小麦粉生地中のグルテン・澱粉を対象とし、それぞれの量が正確に反映されるイメージング手法を開発することを目的とした。グルテン粉末、小麦澱粉粉末、及び蒸留水をそれぞれの割合を変えつつ混合したモデル小麦粉生地を作製し、蛍光指紋からグルテン・澱粉割合を推定するPLSモデルを構築した。このモデルでは、水分量に関わらず、グルテン・澱粉割合を決定係数(R2)0.96という精度で推定することができた。また、モデル小麦粉生地画像の各画素に対してグルテン・澱粉割合を推定するモデルを適用することにより、各画素に存在するグルテン・澱粉割合を推定できた。【研究3】パイ生地中のグルテン・澱粉・バターの可視化タンパク質(グルテン)、澱粉に加え、油脂(バター)を含めた3成分での可視化手法を開発することを目的とした。バターの分布がわかりやすい折りパイ生地を可視化対象とし、蛍光指紋画像を取得した。各画素の蛍光指紋に対して主成分分析を適用したところ、第一主成分にはグルテンの軸が、第三主成分には澱粉とバターの軸が見られた。この主成分軸に合わせて色軸を設定することにより、グルテンの分布、および澱粉とバターの分布を可視化することができた。この研究により、3成分以上の同時可視化が可能であることが示され、より複雑で実際の食品に近い系を扱う可能性が見えた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、グルテン・澱粉・油脂の3成分について、定量化・分布可視化を行う予定であった。研究実績の欄に記述した通り、これらの課題については結果を出し、それぞれ投稿論文および学会発表にまとめている。さらに、申請時には記述がなかった測定機械の精度向上には多くの時間を割き、申請当初に考えていたよりも鮮明な画像が得られるようになり、また短時間での計測が可能になっている。
本研究課題は基本的に申請書通りの計画で進めていくが、特に澱粉と油脂の可視化・分離に多くの時間を割く。これらの物質は元々蛍光が弱いため、正確に分離するには、計測装置の信号雑音比(Signal to Noise Ratio, S/N比)を上げる必要がある。現時点ではある程度の分離は可能であるが、カメラの感度ムラや照射光のムラなど空間的な不均一性に結果が左右されてしまっている。このような空間的不均一性を修正するために、照射光は拡散板などを使いハード面で改善し、カメラの感度ムラはデータ処理によって不均一性を改善する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (20件) 備考 (2件)
Food and Bioprocess Technology
ページ: 1-11
10.1007/s11947-012-0982-7
日本食品科学工学会誌
巻: 59 ページ: 220-224
10.3136/nskkk.59.220
巻: 59 ページ: 387-393
10.3136/nskkk.59.387
Food Science and Technology Research
巻: (印刷中)
International Journal of Food Engineering
Cereal Chemistry
http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/nabetani-araki2012/src/index.html
http://mitokokawa.web.fc2.com/index.html