科研研究の最終年である今年度は、博士論文のデータ収集だけでなく分析枠組み作り、分析、そして考察執筆に着手した。博士論文では、アウトプットが困難な重度障がい者と介助者との関係性に焦点を当てるため、不足するデータを補う為に追加インタビューも実施した。具体的には、兵庫県に在住したS氏とその介助者への聞き取り調査を4月に実施した。 これと並行して、今年度の研究目的の一つであるアウトプットが困難な重度障がい者を支援する支援機器について、国内外の情報を収集・整理した。具体的には、他者と円滑に意思疎通ができる手段として注目される「BMI(Brain-Machine Interface)」の最新技術と臨床現場を知る為にフランスのロックトインシンドローム協会を訪問し、専門家および患者家族へのインタビューを行った。これは、脳と外部機器を直結して意思疎通を可能にする最新技術である。 医療技術の進歩によって脳障害をおった患者の生存率は上がった。しかし、回復後のコミュニケーション支援は不十分であることもわかった。本研究の意義は、コミュニケーションが困難な障がい者が生活するために「通訳者」の養成と制度化、および支援機器が行き渡ることが急務である事を明らかにした点である。この点が大きな社会的意義があると言える。
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