研究課題
本研究ではNIRS(近赤外分光法)とfMRIを用いて、乳児、発達障害者、健常発達者(成人)の脳活動を計測し、顔・表情認知を担う脳領域をその発達過程から明らかにすることを目的とする。本年度は、微細表情からの表情認知を乳児を対象とした行動実験から明らかにした。生後6~7ヶ月の乳児に怒り表情の微細表情を提示し、乳児がこれを認知できるかを静止画提示および動画提示の両条件において検討した。その結果、乳児は静止画では怒り表情を認知したが、動画では認知しないことが示された。この研究成果は海外で乳児期の発達科学を専門とする研究者が集まるInternational Conference on Infant Studiesで発表された。さらに論文としてまとめ、Japanese Psychological Researchに掲載が決定している。同様に、幸福表情の微細表情を提示し、乳児がこれを認知できるかを静止画提示および動画提示の両条件において検討した。その結果、乳児は静止画では幸福表情を認知できないが、動画では認知することを示した。この研究成果は現在、学術雑誌に投稿中である。さらに乳児を対象とし、顔認知能力を検討するために目のコントラスト極性を反転させた顔に対する乳児の脳活動をNIRSを用いて計測し、その研究結果をEuropean Conference of Visual Perceptionにて発表した。この成果は論文としてまとめ国際雑誌に投稿中である。また、学童期の注意欠陥・多動性障害(ADm)をもつ児を対象とし、表情観察時の脳活動をNIRSを用いて計測した。その結果、ADHD児では定型発達者とは異なる脳活動が観察された。この研究成果は、日本心理学会にて発表したほか、論文としてまとめ国際雑誌に投稿中である。他、これらの研究成果を概観したレビューを国内の医学雑誌として権威のあるBrain and Nerve誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
乳児を対象とした表情認知研究に着手し、その研究成果を2本の論文にまとめることができた。さらに本研究の大きな目的である、顔・表情認知の非定型発達を検討するために発達障害児を対象とする脳活動計測を開始し、今後2年間の活動につながると期待できる。
次年度以降は発達障害児者を対象とし、顔・表情認知能力をNIRSを用いた脳活動計測から検討していく。当初の計画では顔のバイオロジカルモーションを用いる予定であったが、共同研究を予定していた外部機関での人事異動の関係上、刺激の作成が困難になったため、既に乳児を対象とした行動実験で実績のある微細表情認知を中心に進めていく予定である。さらにフランスおよびイタリアの乳児の顔・表情認知研究者との共同研究の機会に恵まれたため、乳児における顔・表情認知能力の検討を優先して行っていく予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)
Japanese Psychological Research
巻: (掲載決定(印刷中)
doi:10.1111/j.1468-5884.2012.00540.x
Brain and Nerve
巻: 64 ページ: 761-769
発達科学
巻: 26 ページ: 153-153
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/ickw/