研究課題
本研究ではNIRS(近赤外分光法)とfMRIを用いて、乳児、発達障害者、健常発達者(成人)の脳活動を計測し、顔・表情認知を担う脳領域をその発達過程から明らかにすることを目的とする。本年度は、微細表情からの表情認知を乳児を対象とした行動実験から明らかにした。生後6~7ヶ月の乳児に幸福表情の微細表情を提示し、乳児がこれを認知できるかを静止画提示および動画提示の両条件において検討した。その結果、乳児は動画では幸福表情を認知したが、静止画では認知しないことが示された。この研究成果は論文としてまとめ、Perception誌に掲載が決定した。さらに乳児を対象とし、顔認知能力を検討するために目のコントラスト極性を反転させた顔に対する乳児の脳活動をNIRSを用いて計測した。その結果、目のコントラストが保たれた顔にのみ有意な脳活動の上昇がみられたが、コントラストが反転した顔では見られなかった。この成果は論文としてまとめNeuropsychologia誌に掲載された。また、学童期の注意欠陥・多動性障害(ADHD)をもつ児を対象とし、表情観察時の脳活動をNIRSを用いて計測した。その結果、ADHD児では定型発達者とは異なる脳活動が観察された。この研究成果を、第55回日本小児神経学会学術集会(5月30日-6月1日)および国際学会(4th World Congress on ADHD (6月6日-9日)で発表した。他、これらの研究成果を概観したレビューを国内の医学雑誌で臨床現場の方向けの雑誌である作業療法ジャーナルに発表した。
2: おおむね順調に進展している
乳児を対象とした顔・表情認知研究は2本の論文にまとまるなど順調に進んでいる。一方でその非定型発達を検討した論文が雑誌に投稿するも採択に至っていないことは次年度中に解決すべき課題である。今後はADHD以外にも自閉症を含む非定型発達について広く検討していく予定である。
次年度は、自閉症を含む発達障害児者を対象とした研究に重点を置いて研究を遂行する。特にADHD児を対象とした脳活動計測の結果を、より洗練された手法で解析することによってその特性の解明に力を入れる。並行して、昨年度より開始したフランスおよびイタリアの乳児の顔・表情認知研究者との共同研究を展開させ、乳児における顔・表情認知能力の検討を優先して行っていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Japanese Psychological Research
巻: 56(1) ページ: 15-23
10.1111/jpr.12025
Neuropsychologia
巻: 51(13) ページ: 2556-2561
10.1016/j.neuropsychologia.2013.08.020
作業療法ジャーナル
巻: 47(9) ページ: 988-993
Perception
巻: (印刷中)
Journal of Experimental Psychology : Human perception & Performance
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/ickw/