研究概要 |
複素球面上の代数的組合せ論に関して、今年度得られた結果は主に次の二つである。 (1)次数の低い複素球面上のコード:愛知教育大の野崎寛氏との共同研究において、サイズが最も大きくなる次数が2,3の複素球面上のコードの特徴づけおよび分類を行った。研究手法はコードのある内積に付随する有向グラフの隣接行列およびSeidel行列の固有値の分布を調べることであり、特にそれら二つの行列の固有値、固有空間の関係性を調べた。その過程で歪アダマール行列の新たな特徴づけも明らかになった。 (2)次数の低い複素球面上のデザイン:Skew weighing matrixの複素球面上のデザインを用いた特徴づけを行った。またSkew weighing matrixに対応する複素球面デザインがどのようなときにアソシエーションスキームの構造を持つかについて、完全な特徴づけを行った。 また研究テーマとは別の話題になるが、島根大の瀬戸道生氏、松江高専の谷口哲至氏との共同研究において、有限グラフのラプラシアンに付随する正定値内積から定まる再生核の研究を行った。グラフがサイクルの場合の先行結果の拡張を一般の連結グラフの場合に行い、再生核の理論の応用や再生核の組合せ論的な意味づけ、有限サイズの行列である再生核の成分に関する様々な不等式が得られた。ラプラシアン行列の研究は多岐にわたっているが、今回の研究の流れにある再生核及び一般逆行列の研究は多くはない。正規化されたラプラシアン行列においても同様の研究が期待される。
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