研究課題/領域番号 |
12J07863
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千葉 知世 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 生態系サービスへの支払い / 費用負担配分 / 地下水政策 |
研究概要 |
本研究は、農地の生態系サービスを保全するための費用負担システムとして、「生態系サービスへの支払い(Payments for Ecosystem Services : PES)」スキームに着目し、その制度設計に向けた知見の提示を大目的とする。 第一の研究内容であったPFS支払額の算出モデルの構築については、農地のESの維持・回復に要する費用をPESの支払額とみなし、これを必要となる労働投入量から推計する数理モデルの構築を検討していた。しかし、当初想定したモデルは、機会費用を考慮できない点で理論的に欠陥があると考えられた。また、事例調査から、実際のPESにおける支払額は、数値化が必ずしも可能でない複雑な社会的要因に影響を受けて決定されていることが推察された。 そこで、数理モデルではなく、実際のPES事例における支払額の分析から、演繹的に定性的モデルを導出することとした。第二の内容であった費用負担配分基準の提案についても、実例で採用されている費用負担配分基準の分析から、実証的に枠組を検討することとした。分析にあたっては、農地のFSの中でもPES事例が比較的豊富に存在し、一方で政策研究の蓄積の乏しい、地下水保全の事例を対象とすることとした。 平成24年度には、主に次の成果を得た。(1)分析対象事例の実地調査を行った。当該PES事業の経過や実施状況に関する資料の収集、主なステークホルダーに対する聞き取り調査を行い、今後の分析に必要なデータを得た。(2)地下水保全に関連する全国の地方自治体の条例等を網羅的に調査し、内容分析を行った。また、保全の具体的取組を把握するためのアンケート調査を実施した。この成果は、平成25年度前期に論文として投稿予定である。(3)農村のES保全を目的として実施されている、民間セクターによる国内外のPES事例を比較分析し、その結果を基に論文を執筆し投稿した(英文誌)。現在審査中である。(4)日本生態学会第60回大会において企画集会を開催し、研究内容の一部について発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の大目的を達成するために、当初の研究計画から多少修正しなければならない点があった。修正後暫くの間、理想的なスケジュールよりやや遅れをとる状況が続いたが、その後スピードアップして進めたことによって、現在はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記10.で既述の通り、当初予定していた定量的研究では研究の大目的の達成に効果的でないと考えられたため、定性的分析手法へと変更した。事例の比較分析から演繹的に理論を導出していくことを目指すため、引き続き事例調査を行っていく。分析に有用な正確なデータを得るため、現地調査を詳細に行うことを重視する。また、平成25年度は最終年度であるため、研究成果を論文として学術誌に発表することも優先課題とする。具体的には、前期のうちに和文誌に2本を投稿し、うち1本はアクセプト済となるように進めていく。
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