• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

日本語動詞の意味拡張に見られる方向性

研究課題

研究課題/領域番号 12J07902
研究機関東京大学

研究代表者

夏 海燕  東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)

キーワード摂食動詞 / 意味拡張 / 認知ドメイン / プロファイル / 日本語 / 英語 / 中国語
研究概要

今年度は主に認知ドメインの異なる側面のプロファイルという観点から、日本語・英語・中国語の摂食動詞の意味拡張を詳細に考察した。認知意味論は主観的意味論の立場から、客観的事態が同じであっても、認知主体の捉え方によって主観的な意味の違いが生じる。また、ある対象や出来事を捉える時、言語表現は常に概念のすべてを表すのではなく、同じ概念の違う側面をプロファイルすることが多い(cf. Croft (1993)の「ドメインハイライティング(Domain Highlighting)」、ドメイン(またはドメイン・マトリックス)内のプロファイル、「活性化領域(active zone)」(Langacker 1987, 1990, 2000 ; Taylor 2002))。本研究では、このような立場から、他動詞のカテゴリーに属してはいるが、他動詞のプロトタイプから外れる摂食動詞に注目し、その意味拡張を考察する。
摂食動詞の基本義には通常の他動詞にある①〈AGENTからPATIENTへの遠心的移動〉の他に、②〈PATIENTがAGENTの口(さらに体内)への求心的移動〉、さらに飲食活動に伴う③〈PATIENTの消失〉といった側面が見られる。基本義にあるこの3つの側面は意味拡張においてどうのように現れるかを考察し、以下のようなことが分かった。
日本語は3つの側面とも拡張義において見られる。①から〈より強い相手をうち負かす〉(横綱をくう)、〈人に敵対的な態度で向かって行く〉(食ってかかる/食いつく/食らいつく) ; ②からは〈[攻撃や処罰など望ましくないことを]受ける〉{パンチ/不意打ち/小言をくう} ; ③からは〈[無生物が][有限なものを]消費する〉(ガソリン/電気代をくう)という拡張義が見られる(篠原(1999)、松本(2007)、堀江・パルデシ(2009)を参照)。
中国語は②の求心義のみ拡張が見られる。日本語「くう/くらう」に類似し、中国語の「吃」には〈[攻撃や処罰など望ましくないことを]受ける〉という拡張が見られる。例えば、〈吃拳(拳骨)/耳光(ビンタ)/败仗(敗戦)/官司(訴訟)/閉門羹(門前払い)/亏(損)/苦(苦)/惊(驚き)〉などの使用例が見られる。
英語のeatは③の〈消失〉という側面のみ〈腐食、浸食〉(fences eaten by rust. eat mental)及び〈消費〉(This car eatsgas.)といった意味に拡張している。
今までの意味拡張の研究は主に語彙の全体的な拡張に注目する研究が多いが、認知ドメインの異なる側面のプロファイルという観点によって、拡張のメカニズムをより明瞭にすることができると考えられる。

今後の研究の推進方策

(抄録なし)

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] なぜ罪を着たり着せたりできるのか―他動詞と二重他動詞ペアの意味拡張をめぐって―2013

    • 著者名/発表者名
      夏海燕
    • 雑誌名

      日本認知言語学会論文集

      巻: 13 ページ: 360-371

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本語類別詞「個」と中国語類別詞「个」の使用に対する一考察2013

    • 著者名/発表者名
      夏海燕・游韋倫
    • 学会等名
      第5回中日対比言語学会
    • 発表場所
      中国・福建・福建師範大学
    • 年月日
      2013-08-21
  • [学会発表] 从认知域不同侧面的彰显看饮食类动词的语义扩张(「フレーム内異なる側面のプロファイルからみる摂食動詞の意味拡張」)2013

    • 著者名/発表者名
      夏海燕
    • 学会等名
      国際中国語言学学会(The 21st International Association of Chinese Linguistics)
    • 発表場所
      台湾・台北.台湾師範大学
    • 年月日
      2013-07-07

URL: 

公開日: 2015-07-15  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi