研究課題/領域番号 |
12J07903
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 宏和 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 観測的宇宙論 / 宇宙の大規模構造 |
研究概要 |
私はこれまで、分光観測によって得られる天体の3次元分布の4点統計を用いて空間トポロジーを制限する手法を検討してきた(Fujii & Yoshii 2011 ; Fujii 2012)。本年度の進展として、1方法論の完成、および2実際の観測データへの適用と現実的なシミュレーションが挙げられる。1に関しては、4点統計を用いる際の自由度と「回転」および「反転」対称性を持つ空間トポロジーの自由度を比較し、4点統計によって得られる全ての情報を用いるように手法を改良した。2点統計ではトポロジーを決定するのに不十分であり、また6点統計以上は計算時間が膨大になるため、現状ではこの手法が最良である。2に際しては、専門書および論文にあたりどのような天体を用いるのが最良かを検討した。その結果、比較的遠方かつ分光データが豊富であるクエーサーが良いという結論に達した。クエーサーの観測的研究を行っている専門家と議論を重ね、物理的性質(光度関数、ダストトーラス、光度進化など)と観測誤差を組み込んだシミュレーションを行った。これにより「現実的な」状況で本手法が有効であることが示された。次にスローン・デジタル・スカイサーベイによって取得された遠方のクエーサー分布に対して本手法を適用し、空間トポロジーの「候補」(統計的に充分な有意性がなく、独立なチェックが必要である)を選定することに成功した。ただし、現在利用可能なデータは天域が限定されているためにトポロジーの検出率が低く、実際のトポロジーはいまだ隠されている可能性が高い。これらの成果は、現在Astrophysical Journal誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画における平成24年度および25年度の約半分が完了しているため、実際には計画よりも早いペースで研究が進んでいる。しかし、観測誤差の見積もりなど細かい箇所でのミスが幾度か発覚し、学会発表・論文出版が本年度中にはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平坦宇宙における方法論については、現在投稿中の論文(Fujii & Yoshii 2013)で一定の区切りがついたと考えている。2013年3月に発表されたプランク衛星の結果はこれまでの標準宇宙論の見直しを示唆しているという見方があり、その意味でより一般的な宇宙論モデルを考慮する必要がある。現在、コペルニクス大学(ポーランド)の Boudewijn Roukema氏と共同で正曲率モデルへの拡張に着手したところである。また、HarmonicInpaintingを用いた大スケールゆらぎの復元によるトポロジーの制限(近畿大の井上開輝氏と共同)については計画通り進めてゆく。
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