研究課題/領域番号 |
12J07903
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 宏和 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 観測的宇宙論 / 宇宙の大規模構造 |
研究概要 |
研究代表者はこれまで、分光観測によって得られる天体の3次元分布を用いて宇宙の大域トポロジーを制限する手法を研究してきた。具体的には、平坦宇宙において数学的に許されるすべてのトポロジーに適用可能な、天体分布の4点統計に基づく新手法を考案した(4点統計法、Fujii & oshii 2011 ; Fujii 2012)。前年度から本年度にかけては、この手法を実際の天体分布(スローン・デジタル・スカイサーベイによって観測された遠方のクエーサー)に適用し、回転や反転を含む周期構造を持ったトポロジーを初めて観測的に検証した。その結果として、予備的ではあるものの回転角60度のトポロジーの兆候をとらえた。このトポロジー候補に対して、独立した観測によるさまざまな追加検証を検討中である。これらの成果は、8月5日発行の米天文学専門誌「Astrophysical Journal」に掲載されている(Fujii & Yoshii 2013)。また、理論的な進展もあり、4点統計法を正曲率のトポロジーへと拡張することに成功した。以前より、宇宙マイクロ波背景放射の大スケールにおける異常なふるまいが報告されており、ある種の正曲率トポロジーによってそれを説明するアイデアが提案されていた(Aurich & Lustig 2012)。4点統計法を拡張したことで、これらのアイデアを銀河観測によって検証することが可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的な方法論の完成という点では、当初の予定よりも早く進んでいる。一方で、Fujii & Yoshii (2013)において発見した「宇宙のトポロジー候補」に対する追加検証を考える過程で、天体のモデル不定性や観測にまつわる系統誤差が当初想定していたよりも複雑であることが浮き彫りになった。
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今後の研究の推進方策 |
天体の物理モデルや観測における不定性を体系的に取り扱い、その系統誤差を評価する。その結果をもとに、本年度に明らかにした「宇宙のトポロジー候補」に対する追加検証をより具体的に検討していく。また、Euclid衛星をはじめとする次世代大規模分光サーベイを見据えた理論予想を行う。
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