研究課題/領域番号 |
12J07905
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小林 誠 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 気候変動 / 危機意識 / 「伝統文化の消滅」 / 歴史実践 / 記録化 / 文化人類学 / ツバル / オセアニア |
研究概要 |
本研究は、気候変動による伝統文化の消滅という危機意識を背景に、ポリネシア・ツバルで展開している歴史の記録化について考察することを目的とする。この目的を達成するために、2013年度においては、①「気候変動による危機意識の形成」、および②それを背景にしてツバル・ナヌメア環礁にて展開中の「歴史の記録化の動き」についてそれぞれ調査・分析を進めた。また、比較の視座を得るために、ニュージーランド在住のツバル人を対象にした調査を実施した。 調査・分析の結果以下のことが明らかになった。①「気候変動による危機意識の形成」に関しては、近年、急速に普及しているインターネット空間でやりとりされる情報が人々の危機意識の形成に重要な意味を持ちつつあるが、そこでは既存のマスメディアで流布していた「沈みゆく島」というイメージがそのまま継承されていた。②「歴史の記録化の動き」に関しては、事例としてとりあげたナヌメア環礁における「憲章委員会」の活動では、当初の目的は歴史の記録・保存であったのだが、次第に移住先のコミュニティや将来世代において有用な「ハンドブック」の作成へと発展してきたことがわかった。この理由として、気候変動によってツバルの人々が他国へと移住せざるを得なくなった際に自らの文化を守るために必要であるためと説明されており、気候変動に対する危機意識が記録化という歴史実践をより未来志向で実用的なものにするよう作用してきたことを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年10月にニュージーランドにて現地調査を行うことを計画していたが、受け入れ先の都合によって2014年2月に延期した。そのため、調査データの詳細な分析は来年度に持ち越さざるをえなかったが、今年度はこれまで得た民族誌的資料の再分析や文献研究により一定の成果を収めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査研究を深化させていくのはいうまでもなく、今後は、ニュージーランド在住のツバル人移民の調査結果の分析を進め、ホームランドであるツバルでの状況を移民コミュニティのものと比較検討していく。ホームランドと移民コミュニティを対照させることで、どのような状況で気候変動に関する危機意識が形成され、そしてそれが歴史の記録化とどのように結びついていくのかについてより明確なかたちで示していく。
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