研究課題
本研究の目的は、腎エリスロポイエチン産生細胞(以下、Renal Erythropoietin Producing cell, REP細胞)の筋線維芽細胞への形質転換の分子機序を解明することで、腎性貧血の発症と腎線維化の進行を抑制する新規治療法、『REP細胞再生療法』の開発の基盤を作成することにある。本年度は、主にマウスモデルを用いて生体内でのREP細胞の挙動および原因シグナルの網羅的探索につとめた。具体的には、腎性貧血モデルマウスに一側尿管結紮モデル(UUO)を施行し、UUO施行にて形質転換した病的REP細胞と対照REP細胞をフローサイトメトリーにて単離する方法を確立した。さらに、同細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い形質転換原因シグナルと想定されるシグナル群を同定した。また、腎性貧血モデルマウスを用い、可逆的UUOモデルを作出し、UUOの解除にてREP細胞の形質転換とEpo産生能抑制が可逆的に回復することを明らかにした。同モデルでマイクロアレイ解析を時系列で行い、REP細胞の形質転換腎に腎全体で変化するシグナルを同定し、薬理学的介入にてREP細胞機能障害、形質転換の回復が促進されることを明らかにした。加えて、ヒト由来REP細胞株(REPC)に炎症性サイトカインを投与すると低酸素誘導性Epo産生が抑制されることを明らかにした。さらに、REP細胞におけるEPO産生能低下に対するNFκBシグナルの関与をマウス個体内で証明することを目的に、Epo遺伝子制御下にCre組換え酵素を発現するマウスを用いて、REP細胞特異的NFκB過剰発現マウスを作出した。また、上記解析に併行して、Epo遺伝子制御領域におけるシスエレメント解析に向けてのプラスミド構築を作成し、レポーターマウス作出の準備をすすめた。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究通り、病的REP細胞と対照REP細胞をフローサイトメトリーにて単離する方法を確立した。さらに、同細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い形質転換原因シグナルと想定されるシグナル群を同定し得た。また、得られた知見を元に論文を作成し、現在投稿中であり、順調に計画が進行していると考えている。
順調に計画が進行しており、当初の予定通り計画を進行していく予定である。
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