研究課題/領域番号 |
12J07930
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西田 圭佑 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(PD)
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キーワード | 高圧 / 弾性波速度 / 音速 / メルト / 超音波法 / 外核 / Fe-Si / Fe-S |
研究概要 |
地球の外核は、地球物理的観測と衝撃圧縮実験の結果から純鉄の密度に比べ約10%低く、弾性波速度で約3%程度速いことが報告されている。これら密度と弾性波速度に関する二つの条件を満たす軽元素を探すことで、外核組成を推定することができる。本研究では、核中に含まれる軽元素の候補の中でも、硫黄と珪素に注目して研究を行う。硫黄や珪素は地球化学的見地から、外核中に存在しうる主要な候補であるが、対極的な性質を持つ物質であり、異なった核形成過程が想定されている。 今年度は、これまで我々が開発したマルチアンビル型高圧発生装置と超音波法を組み合わせた手法(Nishida et al.2013)を用いて、Fe-SメルトとFe-Siメルトの弾性波速度を圧力と組成を変えて行った。出発試料にFe_<84>S_<16>とFeSおよびFe_<82>Si_<18>を用い、縦波速度をそれぞれ5.4GPaまでの条件で測定を行った。その結果、Fe-Sメルトの縦波速度は硫黄の含有量が増加するに伴い、減少することが明らかになった。一方、Fe_<82>Si_<18>メルトの縦波速度はFe-SメルトやFeメルトに比べ速いことが明らかになった。また、Fe-Sメルトの縦波速度に温度依存性は見られなかったが、Fe-Siメルトの縦波速度は、温度の上昇に伴い遅くなることが明らかになった。この結果は今後学会や論文として発表する予定である。また、より高圧下での測定に向けた高圧セルの開発も行っており、平成25年度は、10GPaを超える圧力で測定を行う予定である。 また、これまで行ってきたFe-SメルトおよびFe-Siメルトの密度測定結果と比較することで、バーチの法則の適用可能性や弾性定数の議論も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の大きな目標であった、高圧下の弾性波速度測定のルーチン化は、細かい高圧セルの改良によって概ね達成することができた。また、後期からSPring-8に課題を申請し、予定を前倒しして、FeS端成分だけでなくFe-Siメルトの弾性波速度の測定を圧力を変えて行うことができた。しかし、これまでの密度測定結果の再解析は若干遅れたため、弾性波速度と密度の結果を合わせて、バーチの式にプロットするところまでは至らなかった。また、CTプレスを用いた鉄合金メルトの密度と弾性波速度同時測定に向けた装置の改良、試料部構成の改良は順調に進んでいる。Spring-8の施設側の不具合により、放射光実験はキャンセルとなったが、2年目以降の基礎データの収集はできた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、概ね計画通り進行しており、現在のところ研究計画の変更や研究遂行上の問題点はない。
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